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シネ・ヌーヴォ2月の番組は、仲代達矢をフィーチャーした小林正樹特集に、岡本喜八特集、そして撮影に素晴らしい足跡を残した瀬川順一特集と盛り沢山だ。前の二つは全て観ているが、岡本喜八作品で、爆弾炸裂のミュージカル『ああ爆弾』がないのは残念。だが、ここは、滅多に見られない、瀬川順一カメラマンの特集を第一に推したい。
『銀嶺の果て』(谷口千吉・1947)や『ジャコ萬と鉄』(同・1949)などの劇映画から出発した瀬川は、その後、ドキュメンタリーに転じて真価を発揮すると同時に、日本ドキュメンタリー史に多大な功績を残したのだから。
それを知るためには、『ルーペ カメラマン瀬川順一の眼』(伊勢真一・1997)を観るがいい。これは、伊勢監督の『をどらばをどれ』(1994)の撮影現場での瀬川の仕事ぶりを描くと共に、カメラマンという仕事に対する、瀬川の姿勢や考えを訊きだしているからだ。その中で、わたしが、凄いと唸ったのは、一遍上人由来の念仏踊りを踊る女性たちを捉えた瀬川のショットだ。そこには、暗闇の中で一心に踊る人の表情が鮮やかに浮かび上がってくるのだ。それは、対象を捉えるのに最適なカメラ位置を探し、カメラと対象が一本の糸で繋がるように撮っているからだろう。
瀬川は、「カメラマンとは、どう生きるかということを考え」続けてきた人だ。その原点は、『戦ふ兵隊』(亀井文夫・1939)で、彼が三木茂のカメラ助手を務めた時に起きた事件である。それは、監督とカメラマンの間で起こったルーペ論争として知られるが、その詳細は、瀬川の話を聞いてほしい。「ルーペ論争」は、たんに何を撮るか撮らないかというレベルに留まらず、対象に向かう者の立ち位置にも関わる問題として、現在の映画作りにもつながる。瀬川順一は、それを考え続け、カメラマンとしての自身の生き方にしてきたのだ。今回の特集では、そのあたりを是非見て欲しい。
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