2016優秀映画鑑賞会 |
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エノケンの頑張り戦術 |
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1939年/東宝/74分 |
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浅草オペラ出身で、「カジノフォーリー」の人気者として世に知られ、日本初の本格的レビュー映画『エノケンの青春酔虎伝』(1934)以来、戦後にまたがって数々の映画に主演した不世出の喜劇役者、榎本健一。この作品は、エノケンが最も脂の乗っていた時期のもので、防弾チョッキ製造会社で犬猿の仲である二人の社員が、何事にかけても張り合う姿を抱腹絶倒の喜劇に仕立てたもの。ライバル社員に榎本の実家のせんべい卸屋で使用人だったという経歴を持つ如月寛多、会社の課長に浅草オペラ時代の師匠だった柳田貞一という馴染み中の馴染みを配している。監督の中川信夫は主にマキノ正博監督門下で修業を積み、映像のリズム感に優れた時代劇を撮っていたが、この頃はエノケンの座付き監督とも言える位置にいた。戦後は『東海道四谷怪談』(1959)などの傑作を発表し、怪談映画の巨匠としても知られている。 |
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ジャンケン娘 |
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1955年/東宝/92分 |
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「平凡」連載の小説をもとに、当時人気沸騰のひばり・チエミ・いづみの三人娘が主演した明朗な娯楽作品。物語は、東京の高校生であるひばりとチエミが京都を訪れ、仲良しになった舞妓のいづみから恋人探しを頼まれるというもので、メロドラマの要素も織り交ぜながら、東宝の中堅である杉江敏男監督がそつなく演出した(映画ロケーションのシーンでは監督も顔を見せている)。この頃日本映画にはカラー映画が増え始め、スクリーンの大型化が始まるなど、技術的にも新しい時代が訪れていた。この作品では赤・青・黄の三色を効果的に散りばめた色彩の工夫が特徴的で、三人が劇中劇の形でそれぞれ歌や踊りを披露するシーンでも、衣装や舞台装置にこうした色彩効果が活かされている。この映画の後も、余勢を駆って同様の青春娯楽篇『ロマンス娘』(1956)が撮られ、ひばりを筆頭とする三人娘の人気の高さを示した。 |
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大学の若大将 |
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1961年/東宝/82分 |
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俳優加山雄三の代名詞とも言える東宝「若大将シリーズ」の第1作で、1971年までの11年間に17本が製作された。名優上原謙の長男という「芸能界のサラブレッド」としてデビューした加山は、明朗快活、スポーツ万能、歌や楽器もこなすというキャラクターで売り出された。流行のスポーツや音楽、若者風俗を取り入れたこのシリーズは彼を早速スターダムに押し上げ、挿入歌のレコードも軒並みヒットさせている。一方、そんな若大将にライバル意識を持ち、その恋路にいつも横槍を入れる登場人物「青大将」もこのシリーズの裏の人気者である。いつも若大将にみじめな敗北を喫するパターンではあるが、「青大将」を演じた田中邦衛に世の注目が集まるきっかけとなった。なおこのシリーズの原型は、昭和初期の松竹蒲田撮影所で、スポーツ万能スター鈴木伝明が主演した一連の「カレッジ物」であるとされている。 |
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君も出世ができる |
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1964年/東宝/100分 |
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東京オリンピックの時代を背景に、外国の観光団を自社に引き寄せようとする観光会社の争いをユーモラスに描いた本格的なミュージカル・コメディ映画。演劇の興行を母体とする東宝ならではのミュージカルだが、お得意のサラリーマン喜劇の要素も加味されているのは興味深い。監督の須川栄三は、出世の希望に燃えるフランキー堺といつも優柔不断な高島忠夫というコンビを軸に据え、さらに益田喜頓といった芸達者をからませながら、よどみのない、厚みのある物語世界を生み出した。ダンスの振付、音楽の構成、舞台装置、編集などあらゆる面で本場ハリウッドのミュージカル・コメディを研究した様が窺えるが、作曲面では登場人物のキャラクターごとに曲調をくっきり使い分けるなど、細かい工夫が随所になされている。とりわけ、雪村いづみ扮する社長令嬢に導かれて、オフィスで事務員たちが繰り広げるダンスのシーンは出色の出来映えであろう。 |
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<上映スケジュール>
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