山中貞雄監督・現存三部作

 

『丹下左膳餘話 百萬両の壺』

『丹下左膳餘話 百萬両の壺』
1935年/91分/日活京都/モノクロ/4Kデジタル修復版
監督・構成:山中貞雄/原作:林不忘/脚色:三村伸太郎/撮影:安本淳/音楽:西梧郎/照明:井上栄太郎/美術:島康平、織田金蔵他/録音:中村敏夫、福島威
出演:大河内傳次郎(丹下左膳)、喜代三(お藤)、宗春太郎(ちょび安)、澤村國太郎(柳生源三郎)、山本禮三郎(与吉)、高勢実乗(茂十)、鳥羽陽之助(当八)、花井蘭子(萩乃)、深水藤子(お久)

◆キネマ旬報の「日本映画オールタイムベストテン」9位に選出されるなど、日本映画史上屈指の傑作。百萬両の隠し場所が描かれたこけ猿の壺を巡る争奪戦を、軽妙にユーモアに描いたコメディ時代劇。大河内傳次郎の当たり役の悲劇のヒーロー・丹下左膳が、剣の腕は立つが恐妻家で庶民的なキャラクターとして描かれ、脇役たちも陽気でコミカル。丹下左膳もののなかでも異色作であり、かつ代表作である。クライマックスのチャンバラシーンが、戦後GHQの検閲でカットされたが、発見された20秒の玩具フィルムをもとに、4Kデジタル修復で欠落部分を補い、映像と音声が甦った最長版となった。

 

『河内山宗俊』

『河内山宗俊』
1936年/81分/日活京都・太秦発声/モノクロ/4Kデジタル修復版
監督・原作:山中貞雄/脚色:三村伸太郎/撮影:町井春美/音楽:白木義信、西梧郎/録音:万宝啓介
出演:河原崎長十郎(河内山宗俊)、中村翫右衛門(金子市之丞)、市川扇升(直侍)、原節子(お浪)、山岸しづ江(お静)、清川荘司(北村大膳)、市川莚司=加東大介(健太)、衣笠淳子(三千歳)

◆『街の入墨者』(35年)に続き、山中が心酔する前進座と組んで製作。情婦のお静に居酒屋を営ませている遊び人・河内山宗俊と、所場代を集めるしがない用心棒の金子市之丞が、弟の不始末がもとに身売りすることになった甘酒売りの娘・お浪を救うため立ち上がる! 「すべての無頼の男たちが“この美しい瞳のためなら死んでもいい”と思うような清純で可憐な娘」、山中貞雄が探し出したお浪の役は、これが本格的デビュー作となる当時15歳の原節子! 生活感にあふれた人情味とユーモアの前半から、情念が一挙に迸るラストの狭い路地での怒涛の大立ち回りアクションと、映画的興奮に満ちた傑作! 伝説の時代劇が甦る!!

 

『人情紙風船』

『人情紙風船』
1937年/86分/PCL・前進座/モノクロ/4Kデジタル修復版
監督:山中貞雄/原作:河竹黙阿弥「髪結新三」/脚本:三村伸太郎/撮影:三村明/美術:久保一雄/美術考証:岩田専太郎/音楽:太田忠
出演:河原崎長十郎(海野又十郎)、中村翫右衛門(髪結新三)、山岸しづ江(おたき)、霧立のぼる(お駒)、市川莚司=加東大介(猪助)、市川笑太郎(弥太五郎源七)、瀬川菊之丞(忠七)、御橋公(白子屋久左衛門)

◆キネマ旬報「日本映画オールタイムベストテン」4位に選出された大傑作。江戸の貧乏長屋。仕官する日を夢見て妻と二人貧しい生活に耐えていた海野又十郎は、同じ長屋の住人・髪結新三が白子屋の娘を誘拐してきたことから、その片棒を担いでしまい…。紙風船のようにわずかな風に翻弄される市井の人々を描いた名作。脚本の三村は海野を楽天家に設定していたが、山中は海野の性格をまったく反対にし、この作品の厭世感を体現する人物に描いた。それはまるで自らの運命を予見していたかのように、映画が完成した日に赤紙が撮影所に届く。わずか翌年、中国戦線で戦病死。「これが遺作とは、ちと寂しい」山中の無念さが胸に迫る。

 

〈上映スケジュール〉

9/3(土)〜9(金)10:00『丹下左膳餘話 百萬両の壺』
9/10(土)〜16(金)10:00『河内山宗俊』
9/17(土)〜23(金)10:00『人情紙風船』

 

〈鑑賞料金〉

一般1800円、シニア1200円、会員・学生1100円、3本セット券3000円
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