若尾文子 映画祭2025 Side.B
【はじめに】
映画女優・若尾文子――増村保造、溝口健二、市川崑、川島雄三ら日本を代表する監督のもと、京マチ子、山本富士子、市川雷蔵、勝新太郎、田宮二郎…昭和を代表する名優と共演し、女優として絶えず進化してきました。
KADOKAWAが保有する大映や角川映画の数多の作品を次世代に継承すべく、2014年に立ち上げたブランド「角川シネマコレクション」。<映画デビュー70周年記念>「市川雷蔵映画祭」に続く角川シネマコレクション・劇場上映企画である今回は5年ぶりに「若尾文子映画祭」を開催、今回は初の試みとして〈Side.A〉、〈Side.B〉と2つに分けて実施します。
〈Side.A〉では初披露する『青空娘』『最高殊勲夫人』の4K版を目玉に、比較的初期の作品を中心に、明るく純粋な若尾文子を堪能できる作品18本を上映。〈Side.B〉では同じく初披露の『妻は告白する』『清作の妻』の4K版を目玉に、大映所属時代の中期以降の作品を中心に、濃厚な若尾文子を堪能できる作品を同じく18本上映します。
人間の表と裏、光や影などいくつもの顔やそれら女性の人生を演じた映画女優・若尾文子の魅力をスクリーンでご堪能頂けますと幸いです。
Side.B スケジュール
※準備中
入場料金
当日券
一般1900円、シニア1300円、会員・学生1200円、高校生以下・ハンディキャップ1000円
回数券 ※準備中
一般5回券6500円、シニア5回券6000円、会員・学生5回券5500円
※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
オンラインチケットはこちら
Side.Aページはこちら→wakaoayako2025sidea.html
公式HP→https://cinemakadokawa.sakura.ne.jp/wakao2025/index.html
上映作品
Side.B
妻は告白する 4K版 初披露※当館では2K上映
(1961年/モノクロ/92分/スコープ)
監督:増村保造 原作:円山雅也 脚本:井手雅人 撮影:小林節雄 美術:渡辺竹三郎 音楽:真鍋理一郎
出演:若尾文子、川口浩、小沢栄太郎、根上淳、高松英郎
◆私が愛するのはあなたひとり…女性の心理を鋭く抉る、衝撃の傑作!
【見どころ】
「これからの女優人生をかけて本作の妻役に挑み、自分の代表作だと自信を持って言える一本になった」と若尾文子も語る、増村×若尾タッグ第九作にして最高傑作。「人を愛する」とはどういうことかを真正面から問う。
【物語】
北穂高・岩壁での遭難時にザイルを切り夫(小沢)を落下させ、死亡させた妻(若尾)。若い男(川口)と共に一命を取り留めたが、その夫には多額の保険金が掛けられていた…。そして殺人容疑者となった妻は法廷に立つ。
©KADOKAWA1961
清作の妻 4K版 初披露※当館では2K上映
(1965年/モノクロ/94分/スコープ)
監督:増村保造 原作:吉田絃二郎 脚本:新藤兼人 撮影:秋野友宏 美術:下河原友雄 音楽:山内正
出演:若尾文子、田村高廣、早川雄三、成田三樹夫、潮万太郎
◆【見どころ】
愛する夫のために闘う壮絶な女の姿を描く異色の人間ドラマにして、強烈な反戦映画。若尾は主人公が乗り移ったかのような名演技を披露、主演女優賞を受賞するなど代表作の一本に。清作役・田村高廣の熱演も必見!
【物語】
家族を支えるため呉服屋の隠居老人(殿山)の愛人をしていたお兼(若尾)は老人の死後、大金を手にして田舎に帰るが、村民からいじめを受ける。その後、清作と出会い結婚するが幸せもつかの間、清作が出征することに…。
©KADOKAWA1965
赤い天使 4K版※当館では2K上映
(1966年/モノクロ/95分/スコープ)
監督:増村保造 原作:有馬頼義 脚本:笠原良三 撮影:小林節雄 美術:下河原友雄 音楽:池野成
出演:若尾文子、芦田伸介、川津祐介、千波丈太郎、赤木蘭子
◆女は白衣の天使か?娼婦か?生死渦巻く地の果てにある真実の愛
【見どころ】
野戦病院を舞台に、傷ついた兵士らに深い愛を注ぐという難役を、若尾が体当たりで演じた異色の戦争映画。ハードな描写も厭わない徹底した演出が戦争の暗部を抉り出す、増村×若尾コンビの中でも屈指の問題作。
【物語】
1939年、西さくら(若尾)は中国・天津の陸軍病院に従軍看護婦として赴任し、やがて前線へと送られる。まさに地獄のような戦場で懸命に任務を果たそうとする軍医の岡部(芦田)に、さくらは心を惹かれていく。
©KADOKAWA1966
赤線地帯 4K版※当館では2K上映
(1956年/モノクロ/85分/スタンダード)
監督:溝口健二 脚本:成澤昌茂(篇中一部分、芝木好子「洲崎の女」より) 撮影:宮川一夫 美術:水谷浩 音楽:黛敏郎
出演:京マチ子、若尾文子、木暮実千代、三益愛子、菅原謙二
◆自身を“売る”女たちを描く、豪華女優陣の共演による傑作群像劇
【見どころ】
世界的巨匠・溝口健二の遺作にして、真骨頂ともいうべき女性映画の名作。売春地域(赤線)に生きる女性をリアルに描く。独特なテーマ音楽や並み居る名女優らを相手に、難役を演じきった若尾の“悪役”演技にも注目。
【物語】
東京吉原のサロン・夢の里―兵士の元愛人ミッキー(京)、幼子や病弱の夫を抱えるハナエ(木暮)、父親の保釈金が必要なやすみ(若尾)らは様々な事情で働いている。そんな折、国会では売春防止法案の審議が始まる。
©KADOKAWA1956
刺青 4K版※当館では2K上映
(1966年/カラー/86分/スコープ)
監督:増村保造 原作:谷崎潤一郎 脚本:新藤兼人 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信 音楽:鏑木創
出演:若尾文子、長谷川明男、山本学、佐藤慶
◆次々と魂を吸われる男たち―若尾の悪の魅力が炸裂する必見の傑作
【見どころ】
谷崎潤一郎の代表作『刺青』『お艶殺し』を映画化。大映の名キャメラマン・宮川一夫の華麗なカメラワークが、美しく激しい情念の世界を映し出す。次第に悪女へと変貌する難役を演じた若尾の美しさやセリフ回しも見どころ。
【物語】
質屋の娘・お艶(若尾)は使用人の新助(長谷川)と駆け落ちするも、騙されて売り飛ばされた挙句、背中に刺青を入れられてしまう。一方、離れ離れになってもお艶を忘れられない新助は、彼女に関わる男を次々と殺していく。
©KADOKAWA1966
越前竹人形
(1963年/モノクロ/102分/スコープ)
監督:吉村公三郎 原作:水上勉 脚本:笠原良三 撮影:宮川一夫 美術:西岡善信 音楽:池野成
出演:若尾文子、山下洵一郎、中村玉緒、中村鴈治郎、西村晃
◆愛を成就できない夫婦の悲劇を情感豊かに描く官能的な恋愛ドラマ
【見どころ】
『飢餓海峡』などで有名な水上勉の小説を映画化。若尾が肉体と女心に揺れる微妙な心理を繊細な演技で表現。越前の風土を見事に描き出した西岡善信の美術や宮川一夫の撮影による美しい風景は秀逸。
【物語】
竹細工職人の喜助(山下)は亡き父が客として通った遊女の玉枝(若尾)と結婚。想い合う二人だったが、夫婦の交わりがない生活に不満を覚える玉枝は昔の馴染みだった男(西村)に抱かれた末、妊娠してしまい…。
©KADOKAWA1963
「女の小箱」より 夫が見た
(1964年/カラー/92分/スコープ)
監督:増村保造 原作:黒岩重吾 脚本:高岩肇、野上竜雄 撮影:秋野友宏 美術:渡辺竹三郎 音楽:山内正
出演:若尾文子、田宮二郎、川崎敬三、小沢栄太郎、江波杏子、岸田今日子
◆愛とはすべてを棄てること―若尾の妖艶な魅力が炸裂する衝撃作
【見どころ】
欲望に身を任せる男女の愛憎と策略、裏切りを描く超絶濃厚ドラマ。田宮二郎や岸田今日子らクセの強い俳優陣の怪演や『赤線地帯』(より江役)でも爪痕を残した名脇役女優・町田博子(本作では女医役)の演技にも注目!
【物語】
夫の愛に飢えた妻・那美子(若尾)はバー経営者の石塚(田宮)と出会い強く惹かれる。しかしその裏で石塚はバーのマダム(岸田)を利用し、那美子の夫(川崎)が勤める会社の株を買い占めて乗っ取りを企んでいた。
©KADOKAWA1964
雁の寺 4K版※当館では2K上映
(1962年/パートカラー/98分/スコープ)
監督・脚本:川島雄三 原作:水上勉 脚本:舟橋和郎 撮影:村井博 美術:西岡善信 音楽:池野成
出演:若尾文子、三島雅夫、木村功、高見国一、中村鴈治郎
◆匂い立つような妖しく美しい若尾の魅力が炸裂する異色の文芸作
【見どころ】
禅寺を舞台に繰り広げられる禁断の愛欲と、少年の復讐を描いた衝撃の問題作。ベテラン俳優陣と実力派スタッフが集結した、傑作『女は二度生まれる』に続く名匠・川島×若尾タッグ二作目。撮影の村井博は若尾実姉の夫。
【物語】
洛北衣笠山の麓にある通称・雁の寺。住職の慈海(三島)は襖絵師の愛人だった里子(若尾)の肉体に溺れていく。里子は見習少年の慈念(高見)に目をかけるが、その少年・慈念は夜ごと二人の情事を覗くようになり…。
©KADOKAWA1962
傷だらけの山河
(1964年/モノクロ/152分/スコープ)
監督:山本薩夫 原作:石川達三 脚本:新藤兼人 撮影:小林節雄 美術:間野重雄 音楽:池野成
出演:山村聰、若尾文子、船越英二、川崎敬三、東野英治郎、高松英郎
◆事業欲の鬼の行きつく果ては…壮大な社会派ドラマの傑作
【見どころ】
第一回芥川賞受賞作家の石川達三同名小説を、『白い巨塔』などの社会派映画の巨匠・山本薩夫が映画化。日本映画を代表する名優・山村聰主演による圧巻の大作。若尾は脇に回り山村演じる主人公の愛人役で華を添えた。
【物語】
西北グループ総裁の有馬(山村)は交通事業や不動産など多種の事業を展開しながらも、私生活では妻以外に二人の愛人を囲っていた。さらに今度は夫がある事務員の光子(若尾)にも目をつけ、愛人契約の提案をする。
©KADOKAWA1964
婚期
(1961年/カラー/98分/スコープ)
監督:吉村公三郎 脚本:水木洋子 撮影:宮川一夫 美術:間野重雄 音楽:池野成
出演:京マチ子、若尾文子、野添ひとみ、船越英二、高峰三枝子、北林谷栄
◆本音大爆発!結婚に人生の夢を託す女性の心理を描く傑作コメディ
【見どころ】
脚本は巨匠・成瀬巳喜男『浮雲』などを担当、戦後の日本を代表する脚本家・水木洋子。京、若尾、野添、高峰など名優演じる人物が毒舌放題言いまくり。婆や役・北林谷栄の怪演も見逃せない必見の傑作。爆笑による腹痛に要注意!?
【物語】
唐沢家の次女で婚活中の波子(若尾)とドライな三女の鳩子(野添)は、兄・卓夫(船越)の妻で、天然気味な静(京)の言動が気に入らない。不満や愚痴が止まらず、兄嫁・静へいたずらを仕掛けて楽しんでいたのだが…。
©KADOKAWA1961
砂糖菓子が壊れるとき
(1967年/カラー/96分/スコープ)
監督:今井正 原作:曽野綾子 脚本:橋田壽賀子 撮影:中川芳久 美術:下河原友雄 音楽:渡辺岳夫
出演:若尾文子、藤巻潤、津川雅彦、田村高廣、船越英二、根上淳、志村喬
◆甘い菓子に群がる蟻の如く…男に翻弄される純情な女の愛の遍歴
【見どころ】
M・モンローをモデルとした曽野綾子の小説を「おしん」の橋田寿賀子が脚本し、『また遭う日まで』などの名匠・今井正が監督した女性映画。売れないモデルからトップ女優になるヒロインを若尾が体当たりで熱演。
【物語】
ヌードモデルの京子(若尾)は社長の工藤(志村)に見出され一躍トップ女優に。しかし工藤が亡くなり後ろ盾を失った京子は心の空白を埋めるべく、野球選手の土岐(藤巻)など次々と男性遍歴を重ねていく。
©KADOKAWA1967
しとやかな獣 4K版※当館では2K上映
(1962年/カラー/96分/スコープ)
監督:川島雄三 原作・脚本:新藤兼人 撮影:宗川信夫 美術:柴田篤二 音楽:池野成
出演:若尾文子、船越英二、浜田ゆう子、伊藤雄之助、山岡久乃
◆金と欲にまみれる悪人たちの攻防を描く衝撃のブラック・コメディ
【見どころ】
名優・乙羽信子の夫で名作を多数監督した新藤兼人脚本によるセリフのほか、変幻自在のカメラ、階段での独白シーンなど全編が驚きと独創性に満ち溢れた名匠・川島雄三による傑作。近年、日本版『パラサイト』との評価も。
【物語】
元海軍中佐で現在は無職の時造(伊藤)は戦時の貧しさを繰り返したくないと、妻(山岡)らと共に家族ぐるみの詐欺をはたらいていた。ある日、息子(川畑)が使い込みをしていた会社の会計係・幸枝(若尾)が現れ…。
©KADOKAWA1962
爛
(1962年/モノクロ/89分/スコープ)
監督:増村保造 原作:徳田秋声 脚本:新藤兼人 撮影:小林節雄 美術:下河原友雄 音楽:池野成
出演:若尾文子、田宮二郎、水谷良重、船越英二
◆妻の座を得ようとする女同士の闘いを描く衝撃の恋愛ドラマ
【見どころ】
愛人としての不毛な生活を捨て、人妻の幸せを得ようと悩む主人公を若尾が熱演。姪役・水谷との喧嘩シーン、典型的なダメ男を軽やかに演じた田宮のほか、新藤兼人の脚本によるリアルなセリフなど見どころがいっぱい。
【物語】
元ホステスの増子(若尾)は浅井(田宮)と不倫関係を続けていたが、ようやく結婚した矢先、姪の栄子(水谷)が二人の家に転がり込む。ある日浅井の子供を産むべく入院していた増子は、栄子の様子に違和感を抱く。
©KADOKAWA1962
女系家族
(1963年/カラー/111分/スコープ)
監督:三隅研次 原作:山崎豊子 脚本:依田義賢 撮影:宮川一夫 美術:内藤昭 音楽:斎藤一郎
出演:京マチ子、若尾文子、田宮二郎、中村鴈治郎、高田美和、鳳八千代、浪花千栄子
◆男の想像を絶する、女心に渦巻く嫉妬と欲望、残酷さを描く文芸大作
【見どころ】
山崎豊子ベストセラー小説を大映の最高スタッフで作り上げた傑作。名優がズラリと並ぶ中、三女の後見人役で颯爽と登場するNHK朝ドラのモデルにもなった浪花による濃厚演技は必見。さながら“浪花千栄子劇場”!
【物語】
三代続く女系家族が営む大阪船場の繊維問屋で、婿養子だった当主が急死。莫大な遺産の相続をめぐり、残された三人姉妹(京、鳳、高田)と当主の愛人(若尾)らがエゴと執念を剥き出しにした骨肉の争いを繰り広げる。
©KADOKAWA1963
華岡青洲の妻 4K版※当館では2K上映
(1967年/モノクロ/99分/スコープ)
監督:増村保造 原作:有吉佐和子 脚本:新藤兼人 撮影:小林節雄 美術:西岡善信 音楽:林光 語り手:杉村春子
出演:市川雷蔵、若尾文子、高峰秀子、伊藤雄之助、渡辺美佐子
◆嫁姑の美しくも終わりなき壮絶なバトルを描いた衝撃の愛憎ドラマ
【見どころ】
近年『青い壺』が再燃した有吉佐和子ベストセラー小説を映画化。主人公に市川雷蔵、妻・若尾文子、姑役に高峰秀子と名優が鬼気迫る演技で火花を散らす必見の傑作ドラマ。
【物語】
華岡家の姑・於継(高峰)に見初められ、嫁入りした加恵(若尾)。修行から戻った夫の青洲(雷蔵)は麻酔薬の研究に憑かれたように打ち込んでいた。薬の完成のため、彼女二人は先を争うように人体実験に志願する。
©KADOKAWA1967
不信のとき
(1968年/カラー/120分/スコープ)
監督:今井正 原作:有吉佐和子 脚本:井手俊郎 撮影:小林節雄 美術:渡辺竹三郎 音楽:冨田勲
出演:田宮二郎、若尾文子、岡田茉莉子、加賀まりこ、岸田今日子、三島雅夫
◆子供の父親は誰か?不信に染まった男女の愛と生態を描く衝撃作
【見どころ】
幾度も映像化されている有吉佐和子同名小説の映画化。人間の恐るべき虚妄と不実を描き、若尾文子と岡田茉莉子の二大女優が熱演。当時トップスターの田宮二郎は本作での序列問題により、一時映画界から追放に。
【物語】
浅井(田宮)は道子(岡田)と結婚して十年、子供はない。ある日ホステスのマチ子(若尾)と出会い、愛人関係になる。やがてマチ子は浅井の子を産むが、ほどなくして妻の妊娠も発覚、浅井は次第に追い詰められていく。
©KADOKAWA1968
卍
(1964年/カラー/90分/スコープ)
監督:増村保造 原作:谷崎潤一郎 脚本: 新藤兼人 撮影:小林節雄 美術:下河原友雄 音楽:山内正
出演:若尾文子、岸田今日子、船越英二、川津祐介、山茶花究
監督:市川崑 原作:三上於莵吉 脚色:伊藤大輔、衣笠貞之助 シナリオ:和田夏十 撮影:小林節雄 美術:西岡善信 音楽:芥川也寸志、八木正生
出演:長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、船越英二、林成年
◆女たちの甘く危険な関係―谷崎文学の濃厚な耽美の世界を描く傑作
【見どころ】
今年没後六十年となる谷崎潤一郎の代表作を映画化。当時日本映画界ではタブー視されていた同性愛の世界を妖しく瑞々しく描いた増村の代表作。神々しいほどの美しさを魅せる若尾と相手役・岸田の品格ある演技も必見。
【物語】
園子(岸田)は、美術学校で出会った美しい令嬢・光子(若尾)の虜になり、絵の完成のため裸体を見せて欲しいと光子にせがむ。やがて二人の関係は、園子の夫や光子の恋人など周囲の人間をも巻き込み、絡まっていく。
©KADOKAWA1964
夜の素顔
(1958年/カラー/121分/スコープ)
監督:吉村公三郎 脚本:新藤兼人 撮影:中川芳久 美術:間野重雄 音楽:池野成
出演:京マチ子、若尾文子、根上淳、船越英二、菅原謙二
◆師匠と弟子、女同士の濃密で緊張感あふれる関係を描く人間ドラマ
【見どころ】
舞踏界でのし上がった女性と、それに取って代わろうと企む弟子―京と若尾二大女優が師匠と弟子役として対峙、壮絶なバトルを繰り広げる傑作ドラマ。色鮮やかな衣装で踊る舞台シーンも見どころ。
【物語】
野心家の踊子・朱美(京)は師匠のパトロンを誘惑、その後ろ盾を得て家元となり、確固たる地位を築く。しかしその朱美の地位を虎視眈々と狙う内弟子の比佐子(若尾)は、彼女の夫(根上)と関係を持つ。
©KADOKAWA1958
【若尾文子 プロフィール】
1933年(昭和 8年)11月 8日東京都生まれ、一男四女の末っ子。1945年、疎開先の仙台で終戦を迎える。
1951年、大映第5期ニューフェイスに合格。翌1952年3月公開の『長崎の歌は忘れじ』で初めてセリフのある役をもらい、同年5月公開の『死の街を脱れて』で本格スクリーンデビュー。
溝口健二、小津安二郎、市川崑、川島雄三、吉村公三郎、そして後の名コンビとなる増村保造など、巨匠・名匠の名作に次々と起用され、本格女優としてのキャリアを積み、1961年『女は二度生まれる』『妻は告白する』でキネマ旬報賞、NHK映画賞、ブルーリボン賞、日本映画記者会賞、ホワイト・ブロンズ賞の主演女優賞5冠を達成。続く1965年には『清作の妻』『波影』でも同5賞の主演女優賞を受賞、2度目の5冠に輝く。そして1968年、『不信のとき』『積木の箱』でキネマ旬報主演女優賞3度目の受賞という前例のない快挙を成し遂げる。映画総出演数は約160本。
1970年以降は舞台やテレビドラマにも活躍の場を広げ、ソフトバンクのC M に、白戸次郎(犬のお父さん)の母親役で登場し話題となった一方、国内外で主演映画が定期的に上映されるほどファン層が拡大。2014年にはキネマ旬報社によるファン投票で、日本映画女優部門第2位に選出(「オールタイム・ベスト映画遺産 日本映画男優・女優100」より)されるなど、今なお幅広い世代からのファンを獲得し且つ魅了し続けている。