没後60年 映画監督 清水宏 〈第2弾〉

没後60年4月から6月にかけて上映した映画館では最大規模の清水宏監督の特集上映「没後60年映画監督清水宏」が大好評。自然の中のロケーションを好み、作為をきらった即興的な演出、セリフ、演技、演出を極力排除する実写的精神に大興奮! モダンでスマートな都会の若者たちを描く一方、粋な流れ者の女たちを共感をもって、その流転する人生のはかなさを見守るように描く、稀有なエスプリをまとった名作の数々!

まさに戦前に花開いた「早すぎたヌーヴェルバーグ」!!
『不壊の白珠』『大學の若旦那』『金色夜叉』『歌女おぼえ書』『人情馬鹿』など前回未上映の貴重な国立映画アーカイブ所蔵作品から、『有りがたうさん』『花形選手』『按摩と女』『蜂の巣の子供たち』『小原庄助さん』など何度見ても素晴らしい清水の代表作15作品を一挙上映! まさに決定版清水宏特集上映!!

清水宏監督略歴

1903年3月28日、静岡県天竜川沿いの山村に生まれ、小学校は東京、旧制中学は浜松で学び、北海道大学農学部に入学するが1年で中退。22年に松竹蒲田撮影所に入社。翌年、小津安二郎が松竹に入社し、小津とは終生の友となる。24年、21歳という若さで『峠の彼方』で監督第1作。京都の松竹下加茂撮影所に移り時代劇も手掛ける。当時、下加茂に入社した田中絹代と恋に落ち、結婚しようとするが、城戸四郎撮影所長から「試験結婚」を勧められる、わずか2年で破局。25年に蒲田に復帰、若きメロドラマ作者として将来を嘱望された。メロドラマのほか、流行した新聞小説の映画化など多様な作品を量産して精力的に働いた。松竹一の早撮りの多作家となり、デビュー10年目にして100作品近くの映画を監督。30年代、親友の小津と共に、ソフィスティケーションされた松竹蒲田のモダニズムを担った。とりわけ『大學の若旦那』(33年)に始まる「若旦那シリーズ」など松竹現代劇の娯楽映画を代表する監督となる。 都会の若者たちの商業映画を撮る一方で、早くから伊豆など自然のロケーションを好んで、独自のユーモアを含んだ写実的な映画を作り始める。本格的なトーキー時代となった36年、『有りがたうさん』を発表。全編ロケーションで撮影する手法は、「実写的精神」と呼ばれ、絶賛を浴びる。作為のない、あるがままなものを好んだため、子どもや新人、大部屋俳優、素人を使い、極力セットを排して実景の中で演出を行う。この手法で、数々の傑作を手掛け、日本映画の巨匠として活躍した。しかし、一方であまりにも強引な性格でスタッフの反発も招く。戦後は松竹を辞め、戦災孤児たちを引き取り育てながら、48年には「蜂の巣映画」を立ち上げ、戦災孤児たちを主人公に『蜂の巣の子供たち』(48年)を製作。戦後の独立プロの嚆矢と高い評価を受ける。その後、溝口健二に誘われ、大映と専属契約を結ぶ。晩年は心臓病の養生をかねて、65年に京都市の北嵯峨に家を構えるが、66年6月23日、心臓麻痺のために急逝。遺作は大映で撮った『母のおもかげ』(59年)。大徳寺大光院の墓に埋葬され、分骨が故郷の天竜川に流された。

上映作品

提供:国立映画アーカイブ

不壊の白珠(ふえのしらたま) ピアノ演奏付き上映

1929年/松竹蒲田/102分・24fps/35mm/無声・染色
監督:清水宏/原作:菊池寛/脚本:村上徳三郎/撮影:佐々木太郎/美術:水谷浩
出演:八雲恵美子、髙田稔、及川道子、新井淳、小村新一郎、鈴木歌子、伊達里子、髙尾光子

◆菊池寛の通俗小説を映画化したメロドラマ。会社員の青年(高田)が、彼に恋する内気なタイピスト(八雲)ではなく、快活で無邪気なその妹(及川)と結婚してしまう。姉は青年を憎むが、遊び好きな妹との結婚も長続きせず…。清水の都会的でスマートな作家として本領発揮。水平方向の移動撮影や180度の切り返しなど、大胆な空間造形!2005年にチェコの工房で製作当時のフィルムの染色を再現した復元版(英語字幕付)。

提供:国立映画アーカイブ

大學の若旦那

1933年/松竹蒲田/85分/35mm/サウンド版
監督:清水宏/原作:源尊彦/脚本:荒田正男/撮影:青木勇、佐々木太郎/美術:脇田世根一
出演:藤井貢、武田春郎、三井秀男、徳大寺伸、逢初夢子、光川京子、水久保澄子、斎藤達雄、坪内美子、若水絹子、坂本武、大山健二、山口勇

◆清水戦前のマスターピースとなった「大學の若旦那」シリーズ第1作で、唯一現存している貴重な一篇。原作の源尊彦は清水のペン・ネーム。老舗問屋の跡取りで大学ラグビー部の主将(藤井)は呑気な若旦那。恋にスポーツにと、モダンかつ人情味あふれる清水の初期代表作。トーキー移行期に数多く製作された「サウンド版」の1本で、当時人気の『ロイドの人気者』などアメリカ喜劇映画の影響を日本の下町風にアレンジした名編。

有りがたうさん

1936年/松竹大船/76分/35mm
監督・脚本:清水宏/原作:川端康成/撮影:青木勇/音楽:堀内敬三
出演:上原謙、桑野通子、二葉かほる、石山隆嗣、仲英之助、築地まゆみ、河村黎吉、忍節子、堺一二、山田長正、河原侃二、久原良子

◆川端康成原作をもとに、「有りがたうさん」と呼ばれるバス運転手を中心として、伊豆の山道を往復する乗合バスの乗客たちの姿を点描したユーモア溢れる傑作。町に身売りされようとする若い娘の話を基軸としながらも、酌婦や旅役者、朝鮮人労働者といった行き交う人々を、ドラマ性を排除して移りゆく風景の中にとらえていったロードムービー。上原謙が清水作品に初主演。バスが大好き、何度見ても楽しい清水映画代表作。

提供:国立映画アーカイブ

金色夜叉

1937年/松竹大船/77分/35mm
監督:清水宏/原作:尾崎紅葉/脚本:源尊彦、中村能行/撮影:青木勇/美術:江坂実/音楽:伊藤宣二
出演:夏川大二郎、川崎弘子、近衛敏明、三宅邦子、上山草人、佐分利信、笠智衆、豊田満、武田秀郎、佐野周二、大塚君代、吉川満子

◆1910年代から何度も映画化されてきた尾崎紅葉の人気小説の初めてのトーキー作品。許嫁の鴫沢宮(しぎさわ みや=川崎)が、恋人の間貫一(はざま かんいち=夏川)を捨てて資産家に嫁いだために、学生だった間は冷酷な高利貸となって彼女に復讐しようとする…。「来年の今月今夜のこの月を僕の涙で曇らせてみせる」の名セリフも、モダンな清水版ではこうなる!あまりに省略、あまりにスピーディ。人物の設定も近代的に驚きの改変!!

 

花形選手

1937年/松竹大船/64分/16mm
監督:清水宏/脚本:鯨屋當兵衛(清水)、荒田正男/撮影:猪飼助太郎/美術:江坂実、穂苅貞一/音楽:伊藤宣二、島田康
出演:佐野周二、笠智衆、日守新一、近衛敏明、大山健二、坪内美子、爆弾小僧、長船フジヨ、突貫小僧、葉山正雄

◆親友の小津安二郎や山中貞雄が出征していた37年、清水は軍事教練の行軍演習に励む学生たちと彼らを取り巻く人々の姿を描く。戦時体制にあって、何度も反復される軍歌の唱和と行進は、農民や女学生、後をついていく子どもたちと交錯するたび、その主題は横滑りし、転倒されていく…。大学陸上部の花形選手に佐野、ライバルに笠智衆が扮し、ロケの楽しさ溢れる清水スタイルの典型ともいうべき作品で、何度でも見たい清水の傑作。

 

按摩と女

1938年/松竹大船/66分/35mm
監督・脚本:清水宏/撮影:齋藤正夫/美術:江坂実/音楽:伊藤宣二
出演:高峰三枝子、徳大寺伸、日守新一、佐分利信、爆弾小僧、坂本武、二木連、春日英子、京谷智恵子、油井宗信、飯島善太郎、大杉恒雄

◆旅と温泉をことさら愛した清水映画の真骨頂、ここにあり!目が見える人を追い抜くのを楽しむ按摩(徳大寺と日守)が、新緑の山あいの温泉場に泊まる。同じ宿に泊まった東京から来た女(高峰)に、按摩(日守)がほのかな恋心を抱くさまを描く清水のオリジナル・シナリオの名編。社会の周縁に位置する者たちの淡い出会いと別れを好んで取り上げる清水映画の中でも何度も見てみたい極めつけの1本。洒脱で軽快でロマンチック!

提供:国立映画アーカイブ

歌女おぼえ書

1941年/松竹大船/97分/35mm
監督:清水宏/脚本:長瀬喜伴、八木澤武孝/撮影:猪飼助太郎/美術:江坂実/音楽:伊藤宣二
出演:水谷八重子、上原謙、藤野秀夫、河村黎吉、富本民平、朝霧鏡子、根本淳、エム・ウクラインセフ、春日英子、武田秀郎、河原侃二

◆清水本人の原案で、舞台の大女優・初代水谷八重子を5年ぶりに映画に迎えて撮ったメロドラマ。新派的題材をダイナミックに描いた異色の傑作。実話に基づき、夫を失い、借金だらけの店を遺された元旅役者の歌女(水谷)が、義理の息子・庄太郎(上原)の学業継続のため、献身的に商いを続ける。冒頭の山道シーンや屋外から室内まで一続きに捉えたシーンなど移動撮影が絶妙。

 

サヨンの鐘

1943年/満洲映画協会・松竹下加茂・台湾総督府/74分/16mm
監督:清水宏/脚本:長瀬喜伴、牛田宏、斎藤寅四郎/撮影:猪飼助太郎/美術:江坂実/音楽:古賀政男
出演:李香蘭、近衛敏明、大山健二、若水絹子、島崎浣、中川健三、三村秀子、水原弘志、中村実

◆清水が当時の植民地・台湾で満映のスター・李香蘭を主演に撮った国策映画。38年に台湾で実際に起きた原住民族の少女の落水事故を基に、台湾・霧社でロケを敢行。渡辺はま子歌唱によるヒット歌謡曲を、本作では李香蘭が歌っている。岩崎昶の企画で、主要登場人物はすべて日本人俳優が演じ、現地のタイヤル族住民がエキストラとして出演。現存プリントは途中の1巻が欠落。留守中、松竹では横暴だとする助監督らの訴えで、帰国した清水は大船を追放の憂き目に…。

 

蜂の巣の子供たち

1948年/蜂の巣映画部/84分/35mm
監督・脚本:清水宏/撮影:古山三郎/音楽:伊藤宣二
出演:島村俊作、夏木雅子、久保田晋一郎、岩本豊、千葉義勝、三原弘之、平良喜代志、硲由夫、中村忠雄、川西清、御庄正一、伊本紀洋史

◆『サヨンの鐘』の後、大船を追放され、松竹京都所属となった清水は、45年に松竹を退社。そんな清水が戦災孤児たちを引き取り熱海の山中で育てながら、48年に蜂の巣映画を立ち上げ自主製作した戦後第1作。清水が共に暮らしていた戦災孤児たちを本人役で出演させ、下関から大阪の「みかえりの塔」まで、復員兵と8人の浮浪児たちが旅するロードムービー。公開後、社会的に大きな反響を呼び、その後2本の続篇が製作された。戦後の独立プロの嚆矢として絶賛!

 

小原庄助さん

1949年/新東宝/91分/デジタル
監督・脚本:清水宏/脚本:岸松雄/撮影:鈴木博/美術:下河原友雄/音楽:古関裕而
出演:大河内傳次郎、風見章子、宮川玲子、清川虹子、飯田蝶子、田中春男、清川莊司、鳥羽陽之助、日守新一、鮎川浩、石川冷

◆民謡「会津磐梯山」の主人公「小原庄助さん」をモデルに清水が翻案し、盟友であり批評家から脚本家に転進した岸松雄が脚本・製作に参加。オール・ロケーションによる牧歌的風景の中にユーモラスに描く。農地改革で没落していく人のいい地主を、時代劇スター大河内傳次郎が、風流に生きる現代版の小原庄助像を好演。滅ぶことの豊かさなど、ユーモアとペーソスに満ちた傑作。前回、藤井仁子さんのトークが素晴らしく、見直すべき名編として再度上映!!

 

その後の蜂の巣の子供たち

1951年/新東宝・蜂の巣映画部/94分/デジタル
監督・脚本:清水宏/撮影:古山三郎/音楽:伊藤宣二
出演:岩本豊、若林令子、千葉義勝、久保田晋一郎、三原弘之、中村貞雄、川西清、硲由夫、平良喜代志、麥田シゲ子、大庭勝、原田三夫

◆『蜂の巣の子供たち』の3年ぶりの続篇。京都から伊豆に移り、山麓の農場で定着し、自給自足の共同生活を送っていた清水と子どもたちの暮らしぶりを映画化。農場で暮らす子供たちの日常を素朴なドキュメンタリータッチで描く。前作で社会的な注目を集めたことから、雑誌記者や女学生が押しかけたり、報道や取材によってかき乱された実際の彼らの生活が、リアルに描写されている。

 

桃の花の咲く下で

1951年/新東宝/74分/デジタル
監督・脚本:清水宏/脚本:岸松雄/撮影:鈴木博/照明:秋山清幸/録音:片岡造/美術:鳥居塚誠一/音楽:服部良一
出演:笠置シヅ子、日守新一、大山健二、鳥羽陽之助、尾上桃華、北沢彪、花井蘭子、柳家金語楼、花岡菊子、堀越節子、清川玉枝

◆“ブギの女王”笠置シヅ子と清水が唯一コンビを組んだ1本。紙芝居屋の阿彌子(笠置)は訳あって離れて暮らす息子・明の温泉療養に付き添うことになり、束の間の幸せな時間を過ごすが、やがて別れの時がきて…。紙芝居を読みながら歌って踊る笠置の姿は天下一品。垣間見える哀愁に女優としての才能が光る。子供たちの描写、温泉地の風情が光る名匠・清水宏の母もの映画。紙芝居をやめて按摩になった日守新一も楽しい。

しいのみ學園

1955年/新東宝/100分/デジタル
監督・脚本:清水宏/原作:山本三郎/撮影:鈴木博/美術:鳥居塚誠一/音楽:齋藤一郎
出演:宇野重吉、香川京子、花井蘭子、毛利充宏、河原崎建三、岩下亮、龍崎一郎、島崎雪子、伊達信

◆小児マヒの子どもたちのために学園を設立した山本三郎の手記を、『みかへりの塔』や「蜂の巣」三部作の清水宏が映画化。伊豆長岡でロケが行われ、学校のセットも現地に建てられた。入園前に酷薄な仕打ちを受けてきた子どもたちへの救済として、同名主題歌が学園内で繰り返し歌われる。実話に基づきつつ、巧みな演出により子供たちを爽やかに自然に描いた佳作。先生役の香川京子、当時11歳の河原崎健三も好演。

提供:国立映画アーカイブ

人情馬鹿

1956年/大映東京/70分/35mm
監督・脚本:清水宏/原作:川口松太郎/撮影:髙橋通夫/美術:仲美喜雄/音楽:米山正夫
出演:角梨枝子、菅原謙二、藤田佳子、船越英二、進藤英太郎、浪花千榮子、滝花久子、根上淳、潮万太郎、三田隆、小原利之、小山内淳、ジョー・オハラ、ペギー・葉山

◆溝口健二に誘われ、大映と専属契約を結んだ清水の最初の作品。川口松太郎原作の大正時代の人情話を、オートバイのセールスマン(菅原)とキャバレーの歌手(角)という戦後の設定にアレンジした喜劇。美人女優として活躍していた角梨枝子が、浪花千栄子や進藤英太郎といった芸達者な脇役陣に支えられて、溌剌とした魅力を発揮している。

踊子

1957年/大映東京/96分/デジタル
監督:清水宏/ 原作:永井荷風/脚本:田中澄江/撮影:秋野友宏/美術:柴田篤二/音楽:斉藤一郎
出演:淡島千景、京マチ子、船越英二、田中春男、藤田佳子、阿井美千子、町田博子、平井岐代子、酒井三郎

◆浅草文化を愛した永井荷風の同名小説を映画化。浅草六区の踊子・花枝(淡島千景)と楽士の恋人・山野(船越英二)の元に、花枝の妹・千代美(京マチ子)が転がり込んでくる。奔放な千代美は山野、そして振付師の田村(田中春男)とも関係を持ち…。前年に松竹専属からフリーとなった淡島千景を大映に迎え、京マチ子、船越英二との洗練されたアンサンブルを通して、人生の浮沈が描かれる。

生ピアノ演奏付き上映

『不壊の白珠』
10/25(日)11:50
10/31(土)13:10
11/3(火・祝)12:00


ピアノ演奏=鳥飼りょうさん(楽士)

トークショー

10/24(土)11:35『大學の若旦那』上映後
ゲスト:マリア・ホセ・ゴンザレス・ムニョスさん(関西学院大学非常勤講師/清水宏研究)

入場料金

当日券

一般1600円、シニア1300円、学生・会員1200円、ハンディキャップ1000円

回数券

一般3回券3900円、シニア3回券3600円、会員3回券3300円

ただし、国立映画アーカイブNFAJ作品は、上記料金に加えてさらに+500円いだたきます。

※3回券は複数人数で使用不可
※トークショー付きの回、ピアノ演奏付きの回、NFAJ作品は招待券・回数券使用不可

【お断り】国立映画アーカイブNFAJ作品は、国の文化財産という貴重な作品です。そのため、上映回数が限られるうえ、版権使用料が配給会社に加え、国立映画アーカイブにも発生し、そのため通常の代金の2倍近くになります。誠に恐縮ですが、もう500円、ご負担いただきますようお願いいたします。3回券も同様です。

※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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