没後30年記念 映画監督 浦山桐郎の全貌

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お詫び【映画監督 浦山桐郎の全貌】
一部のお客様に10/17(土)14:15開催の「トーク+映画監督 浦山桐郎の肖像」について無料上映とお応えしておりましたが、1作品分の料金がかかります。申し訳ございませんが、ご了承下さい。

浦山桐郎浦山桐郎 略歴
◆1930年12月14日、兵庫県相生市生まれ。出産時に母を亡くし、実母の妹が継母になった。高校3年のときに父が謎の自殺をしたので、郷里の名古屋に移る。父・貢は播磨造船に勤めた歌人としても有名で、相生市歌の作詞者でもあった。旧制姫路高等学校から名古屋大学文学部仏文学科を卒業後、松竹の助監督応募に募集するが、身体検査でおとされる。この時、採用されたのは大島渚と山田洋次。試験官だった鈴木清順に誘われ、製作を再開した日活に1954年、助監督として入社。川島雄三、今村昌平らの監督につく。川島の助監督時代、チーフが今村、セカンドが浦山だった。二人には「鬼のイマヘイ、蛇のウラ公」と異名が付く。今村の形相が鬼と呼ばせたのだが、浦山は熱心過ぎる演技指導からのものだった。その姿勢は監督に昇進してからも終生変わらなかった。 1962年、吉永小百合主演の『キューポラのある街』で監督デビュー。貧しさに負けず生きていく少年少女たちの生き方を描いた本作で、いきなりキネマ旬報ベストテン第2位、ブルーリボン作品賞など高い評価を受けた。吉永は盲腸炎の手術から退院した翌日でのクランクイン。しかも初日の撮影が荒川の土手を全力で走るというもので、貧血で倒れながらも気丈に主人公のジュンを演じきり、本作でブルーリボン主演女優賞を受賞した。翌年には和泉雅子主演の『非行少女』を撮り、モスクワ国際映画祭銀賞を受賞。和泉も「ウラ公を殺して、自分も死ぬ」と日記に記すほど、浦山のすさまじい演出に耐えぬき、彼女の代表作になる。これら作品から「女優育ての名手」と評される。2作品とも大ヒットし、華々しいスタートを切ったが、しかし、「人生いかに生きるか」という誠実で、真剣かつ論理的なテーマを追い求めた結果、次の第3作『私が棄てた女』(68年)には6年の時間を要した。この遠藤周作の原作(医者役で特別出演)をもとにした作品は、原作とは異なり、60年安保闘争に挫折した男と女工の愛という浦山の思いが反映された極めて自省的な作品に仕上がり、彼の最高傑作となった。

前2作とたがわず新人の小林トシ江を徹底的にしごき、追いつめられた彼女は自殺未遂を起開が延期されたが、公開されるや大ヒットを記録。作品的にも高い評価を受けた。しかし、日こしたほどだった。映画は完成しても業界は不況の真っ只中。「客が来ない」という理由で、公開が延期されたが、公開されるや大ヒットを記録。作品的にも高い評価を受けた。しかし、日活はその後、ロマンポルノへ路線を変え、浦山は日活を離れフリーになる。『私が棄てた女』から6年、東宝で大作『青春の門』(75年)を手がける。吉永を再度起用するとともに、当時18歳の大竹しのぶを抜擢し、「女優育ての名手」ぶりをいかんなく発揮。筑豊の炭坑へ出かけ準備に3年を費やす浦山の方法論は健在で、続編の『青春の門 自立篇』(76年)と手抜きをしない演出で、両作とも大ヒット。78年には師匠・今村の企画ということで拒否し続けたテレビドラマ「飢餓海峡」を演出、高く評価される。79年には東映動画で初のアニメーション『龍の子太郎』を撮り、80年には灰谷健次郎原作の『太陽の子 てだのふあ』と子ども向けの作品を連作。しかし、そこには生後まもなく亡くなった母への思い、突然自死した父への思いを投影させている。83年には古巣日活(当時にっかつ)で「にっかつ創立70周年記念作品」として初めてのロマンポルノ作品『暗室』を監督。大人の愛を描きたいと演出し、主演の木村理恵をしごく。85年、最後の作品となる『夢千代日記』を監督。『青春の門』で脚本を執筆した旧知の早坂暁からNHKテレビで人気の同名シリーズの最終完結偏の映画化を依頼されてのものだった。『龍の子太郎』の声優を含めると4度目の吉永小百合とのコンビとなるも、テレビの延長での仕事、また初めての東映京都撮影所での撮影と決して満足いくものにならなかった『夢千代日記』の6月8日の公開からわずか5カ月あまりの10月20日、急性心不全で死去。深夜、自宅で眠っていたところ突然の急逝で、わずか55歳という若さだった。お酒を愛し、酒乱でも数多くの伝説を作った監督だった。故郷の相生湾を「母親の子宮のように見える」と評し、生涯に「1ダース映画を撮る」と語っていたが、志半ばの9本で終わった。昭和という時代に行き、壮絶な人生を辿った鬼才だった。弟子の小栗康平は、「哀切であることは誰でも撮れる、それが痛切であるかどうかだ」という浦山の言葉を座右の銘にしているという。今年、生誕85年、没後30年を迎える。

上映作品

昭和という時代を駆け抜けた屈指の映画監督・浦山桐郎。『キューポラのある街』『非行少女』『私が棄てた女』等の名作を残し、吉永小百合、和泉雅子、大竹しのぶらの女優を育てあげ「女優育ての名手」と言われながらも、生涯にわずか9本の映画を残しただけの寡作な映画監督。それは厳しい映画業界にあって納得のゆく企画を探し続け、それも機が熟すまで粘り強く時間をかけ、自分の作品にすべく丁寧にこだわり続けた苦闘の軌跡そのものだった。貧しさを憎み、若者たちに壁のように立ち向かう社会の幾多の問題や、人生をどう生きるかを、真っ向から誠実に、そして真剣かつ論理的に描こうとした作品を作り続けた。1930年に生まれ、わずか55歳でなくなった浦山桐郎監督の今年迎える生誕85年・没後30年を記念し、命日をはさんで全作品の特集上映を開催する。

キューポラのある街

TOMORROW 明日1962年/日活/白黒/99分 
監督・脚本:浦山桐郎/原作:早船ちよ/脚本:今村昌平/撮影:姫田真佐久/音楽:黛敏郎/美術:中村公彦 出演:吉永小百合、浜田光夫、東野英治郎、小沢昭一、浜村純、菅井きん、北林谷栄、殿山泰司、加藤武、吉行和子、下元勉、岡田可愛

♦浦山桐郎と吉永小百合を一躍有名にした出世作。東京と川ひとつ隔てながら大きく街の雰囲気が異なる鋳物の街・埼玉県川口市を舞台に、職人気質の頑固な父親を持つ姉弟が、貧しいながらもけなげに生きてゆく姿を描いた不朽の名作。当時の北朝鮮帰還運動も背景に描かれ、映画は大ヒットを記録。16歳だった吉永小百合は、この作品で女優として開眼。トリュフォーも絶賛した浦山の初監督作。

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非行少女

美しい夏キリシマ1963年/日活/白黒/114分 
監督・脚本:浦山桐郎/原作:森山啓/脚本:石堂淑朗/撮影:高村倉太郎/音楽:黛敏郎/美術:中村公彦 出演:和泉雅子、浜田光夫、小池朝雄、香月美奈子、小夜福子、浜村純、佐々木すみ江、北林谷栄、杉山俊夫、小沢昭一、佐藤オリエ

◆石川県の内灘を舞台に、母の死と父の姦通など、絶望的な環境のなかで、身も心も荒みきった15歳の少女の非行と立ち直りを描く。少女と幼なじみの青年の純愛すら阻むような社会の有り様に、猛烈な怒りを描く浦山の第2作。青年の住み込み先の鶏舎の失火シーン、ラストの金沢駅での二人のシーンは必見。主演の和泉雅子の一世一代の好演技、青年役の浜田光夫も名演。映画も大ヒット。

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私が棄てた女

父と暮らせば1969年/日活/パートカラー/116分
監督:浦山桐郎/原作:遠藤周作/脚色:山内久/撮影:安藤庄平/音楽:黛敏郎/美術:横尾嘉良 出演:河原崎長一郎、浅丘ルリ子、小林トシ江、加藤治子、加藤武、小沢昭一、佐々木すみ江、大滝秀治、江守徹、岸輝子、江角英明

◆自動車部品会社に勤め、専務の姪との結婚を控えていた60年安保挫折派の男。かつては学生運動に青春を燃やした男が、いまは刹那的な快楽と利益を追う人間に成り下がっていた。そんな時、かつて遊んで棄てた女工ミツに再会する…。遠藤周作のベストセラー『わたしが・棄てた・女』を大幅に改変。大切なものを棄て去って生きている真摯な問いに満ちた最高傑作。熊井啓の『愛する』(1997年)も同じ原作。

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青春の門

紙屋悦子の青春1975年/東宝/カラー/188分 
監督・脚本:浦山桐郎/原作:五木寛之/脚本:早坂暁/撮影:村井博/音楽:真鍋理一郎/美術:村木与四郎 出演:吉永小百合、仲代達矢、田中健、大竹しのぶ、小林旭、関根恵子、藤田進、河原崎長一郎、井川比佐志、小沢昭一


◆日活を出た浦山がフリーとして撮った初めての作品。昭和史を織りまぜながら、貧困を生き抜く筑豊炭坑に生きる人々を描く五木寛之のベストセラー小説の映画化。厳しい時代背景と波乱に満ちた環境の中で成長する信介(田中健)を主人公とした大河ドラマだが、『キューポラのある街』以来となる義母役の吉永小百合、信介の幼なじみ織江役の大竹しのぶらの熱演が光る。見応え満載で、邦画興行収入5位の大ヒットを記録。

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青春の門 自立篇

TOMORROW 明日1977年/東宝/カラー/161分 
監督・脚本:浦山桐郎/原作:五木寛之/脚本:早坂暁/撮影:村井博/音楽:真鍋理一郎/美術:村木与四郎 出演:田中健、大竹しのぶ、いしだあゆみ、高橋悦史、伊東辰夫、高瀬春奈、梅宮辰夫、小林旭、梢ひとみ、宇津宮雅代、岡田英次

♦『青春の門』と同じスタッフで作った続編。昭和29年、信介は故郷・筑豊から東京へ出てきて、早稲田大学に入学する。アルバイトで自活するが、貧しい学生として生活を送っていた。新宿赤線の娼婦カオルとの出会い、信介を追って東京に出てきた織江との再会など、人との出会い、友情、人生どう生きるかなどの問いかけに満ちた好編。大竹しのぶが実際に自転車で坂道を転げ落ちるシーンには圧倒!

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龍の子太郎

美しい夏キリシマ1979年/東映/アニメーション映画/カラー/75分
監督・脚本:浦山桐郎/原作:松谷みよ子/アニメ演出:葛西治/作画監督:小田部羊一/美術:土田勇/音楽:真鍋理一郎 声の出演:加藤淳也、熊倉一雄、樹木希林、北村和夫、吉永小百合 ナレーター:黒田絢子

◆童話作家・松谷みよ子の国際アンデルセン賞優良賞受賞作をアニメ化。初のアニメ作品ながら、浦山は脚本、絵コンテ作成、原画チェックなど制作に深く参加。山でおばあさんと二人暮らしている太郎は、母が龍になって北の国の湖にいると聞かされる。龍となった母を探しに太郎は旅に出る…。産みの母を生後二週間で亡くした浦山が、母親のイメージを追い求めて作る。母の声を吉永が演じている。

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太陽の子 てだのふあ

父と暮らせば1980年/共同映画/カラー/140分 
監督・脚本:浦山桐郎/原作:灰谷健次郎/撮影:安藤庄平/音楽:真鍋理一郎/美術:坂口武玄 出演:原田晴美、大空真弓、河原崎長一郎、当山全拡、浜村純、殿山泰司、伊藤敏孝、石橋正次、大滝秀治、黒田絢子、大竹しのぶ

◆児童文学の世界に沖縄戦という社会問題を盛り込み、そのテーマ性に対して賛否両論となった灰谷健次郎原作を独立プロで映画化。神戸で食堂“てだのふあ沖縄亭”を営む沖縄出身の夫婦と小学6年生のふうちゃん、そして店に集まる人々の交流と背後に隠された暗い戦争の傷あとを描く。河原崎長一郎扮する自殺する父親に、浦山の父親の死のイメージを投影。沖縄戦の後遺症は今なお癒えることはない。

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暗室

紙屋悦子の青春1983年/にっかつ/カラー/122分/R18+ 
監督:浦山桐郎/原作:吉行淳之介/脚本:石堂淑朗/撮影:安藤庄平/音楽松村禎三/美術:佐谷晃能 出演:清水紘治、木村理恵、三浦真弓、芦川よしみ、寺田農、江角英、麻生うさぎ、田家幸子、風祭ゆき、殿山泰司、浜村純


◆にっかつ創立70周年記念作品として製作されたにっかつロマンポルノ・エロス大作。浦山が14年ぶりに古巣で、吉行淳之介の同名小説を題材に初めてポルノ作品に挑戦。華道の師匠、バーで知り合ったレズの女、近所に住む読者などと奔放な性生活を繰り返す流行作家と、それぞれに自分の生き方を見つけていく女たちを描く。ロウソク1本のライティングなど、美しいエロティシズムが秀逸。

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夢千代日記

紙屋悦子の青春1985年/東映/カラー/128分
監督:浦山桐郎/脚本:早坂暁/撮影:安藤庄平/音楽:松村禎三/美術:井川徳道 出演:吉永小百合、名取裕子、北大路欣也、田中好子、樹木希林、斉藤絵里、小田かおる、三條美紀、横内正、左時枝、岸部一徳、市川好郎、中島葵、加藤武


◆山陰の温泉町を舞台に、原爆症で死期迫る薄幸の芸者・夢千代の生き様を描く。NHKテレビで好評を博したシリーズの最終完結偏。余命幾ばくもない夢千代が出会った男、それは過去を背負い人目を忍ぶ身だった。互いに許されぬ恋が、最後の命を燃やす…。『キューポラのある街』で浦山が育て、大スターに成長した吉永小百合が主演した本作が、浦山最後の作品となった。公開のわずか4カ月後に死去した。

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映画監督 浦山桐郎の肖像

1998年/製作:関西テレビ・疾走プロダクション/演出:原一男/構成:小林佐智子 ◎放送文化基金賞優秀賞

◆『太陽の子 てだのふあ』など浦山作品の助監督についた原一男が、関西テレビの製作で師・浦山を描いたテレビドキュメンタリー。公私にわたって浦山を知る65人もの関係者にインタビューを実施。原が主宰する「CINEMA塾」のスタッフとともに撮影。当初、1年で完成予定が、取材に1年と2カ月、編集に半年をかけ製作され、関西地区で1998年1月2日の深夜に放映された。なお、取材の記録を『映画に憑かれて 浦山桐郎』(発行:現代書簡)として出版している。

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イベント

10/17(土)14:15 トーク=原一男監督  ※トークの後、『映画監督浦山桐郎』を参考上映します。

10/23(金)16:45 トーク=小栗康平監督 ※『私が棄てた女』の上映後に行います。

入場料金

前売券

前売1回券1,200円/前売3回券3,000円
※前売券は、劇場窓口、チケットぴあ、セブンイレブン、サークルKサンクス(以上Pコード:466-368)他にて好評発売中!

当日券

一般1,400円/学生1,200円/シニア1,100円/会員1,000円/高校生以下800円
当日3回券3,600円/シニア3回券3,000円/会員3回券2,700円 ◎命日の20日は1,100円均一

※連日朝より当日分の整理番号つき入場券の販売を開始します。
ご入場は各回10〜15分前より整理番号順となりますので、前売券なども受付にて入場券とお引き換えください。

スケジュール

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