柳生武芸帳 片目の忍者
集団時代劇期の傑作。砦に囚われた大名と姫を救出すべく、十兵衛率いる柳生軍団が立ち向かう。待ち受けるは、堅牢な要塞と無数の鉄砲。近づこうにも隠れる場はない。猛烈な銃撃の下、命がけで城壁へ向かう様はまるでノルマンディー上陸作戦。『プライベート・ライアン』に匹敵する戦闘アクションが展開される!
高田宏治さんはほぼ東映京都作品を中心に半世紀にわたって脚本を執筆し続けてきました。明朗時代劇、集団時代劇、任侠、カラテ、実録、大作、文芸、極妻――高田さんのフィルモグラフィは、時代の潮流に合わせて目まぐるしく移り変わる東映映画の変遷そのものといえます。これほど長いこと東映の第一線に立ち続けた脚本家は、他にいません。
それでいて、その作風は必ずしも「ザ・東映」というテイストのものばかりではありません。凝りに凝ったアクション、異様なまでに際立つ悪役たち、時には悪に手を染める主人公、男を凌駕していく女性たち、そしてあまりに苦いラスト。実は反骨的な作風を通してきた人でもありました。
今回は、そうした多彩な高田さんの作品歴の中から、各年代においてその作家性が色濃く出た作品をピックアップしました。そのラインナップは。必ずしも「不朽の名作」と世評の高い作品ばかりではありません。特に、深作欣二監督とのコンビ作で『資金源強奪』、五社英雄監督とのコンビ作で『北の螢』というチョイスは、映画ファンの方は意外に思われるのではないでしょうか。
ただ、当時の評価や作品の知名度を離れて、改めてこれらの作品に触れていただきますと、高田さんがなんと野心的な試みをしていたのかがよく理解していただけると確信しています。それは、ブルース・リーの二番煎じ的な企画である『激突!殺人拳』も同じです。そして、『般若のお百』は高田さんご自身のチョイス。
「なめたらいかんぜよ!」の魂で会社や大衆に挑み続けた稀代の娯楽作家の魂、ぜひとも受け止めてくださいませ。
春日太一(『なめたらいかんぜよ〜脚本家・高田宏治の生きた東映五十年の狂熱』著者)
1934年4月7日、大阪市内で生まれる。1954年、東京大学に入学し同期の大江健三郎の影響もあり文筆を志す。1956年に東映に入社。内田吐夢監督の助監督を経て、脚本家・比佐芳武に師事。1960年、テレビ時代劇『白馬童子』の一編 『南蛮寺の血斗』で脚本家デビュー。『柳生武芸帳 片目の忍者』(1963)『忍者狩り』(1964)『十兵衛暗殺剣』(同)『妖艶毒婦伝 般若のお百』(1968)と立て続けに時代劇の傑作を世に送る。1969年に大映から声がかかり市川雷蔵の遺作『博徒一代 血祭り不動』『関東おんな』シリーズなどを手がける。1974年には千葉真一主演『激突! 殺人拳』と『逆襲! 殺人拳』を手がけ、ヤクザ映画が下火となっていた東映に大ヒットをもたらす。同年、欧米公開され、アメリカでは3週間でベスト5に入る快挙を遂げ、千葉真一の海外進出のきっかけとなった。『激突! 殺人拳』のヒットを受けて『ザ・カラテ』(1974)を執筆。同年『山口組外伝 九州進攻作戦』で初の実録路線を執筆、続く『三代目襲名』は大ヒットした。深作欣二『資金源強奪』(1975)、中島貞夫『やくざ戦争 日本の首領』(1977)、五社英雄『鬼龍院花子の生涯』(1982)、『北の蛍』(1984)ら名だたる監督と協働し傑作を生み出す。1986年以降も『極道の妻たち』シリーズ他で東映を支え続けた。脚本家人生50年を語り尽くした春日太一著『なめたらいかんぜよ 脚本家・高田宏治の生きた東映五十年の狂熱』出版を記念し、特集上映「なめたらいかんぜよ 脚本家・高田宏治、東映五十年の狂熱」を開催。開催中、高田は92歳を迎える。
集団時代劇期の傑作。砦に囚われた大名と姫を救出すべく、十兵衛率いる柳生軍団が立ち向かう。待ち受けるは、堅牢な要塞と無数の鉄砲。近づこうにも隠れる場はない。猛烈な銃撃の下、命がけで城壁へ向かう様はまるでノルマンディー上陸作戦。『プライベート・ライアン』に匹敵する戦闘アクションが展開される!
通常の時代劇から視点を逆転させた、サスペンスフルな時代劇。潜入する忍者ではなく、忍者の任務遂行を防ぐ側から描かれる。闇に潜み、特殊な技能を駆使してくる忍者をいかに狩るか――。そのために雇われたスペシャリストたちの死闘の物語だ。双方が繰り出す非情な手段の数々、壮絶なクライマックス、ラストの寂寥感。徹底して乾いたタッチがたまらない。
琵琶湖の水郷地帯を舞台にした、湖賊対十兵衛の壮絶な死闘。立ちはだかる最強の敵。強いヒーローが悪党を倒す東映的な作劇に満足できなかった高田氏ならではの、工夫を凝らしきったアクションのアイデアが随所に活きる。ヒーローでありながら必死な近衛十四郎と、悪役でありながら泰然自若とした大友柳太郎。この逆転した構図が緊張感を高める。
高田氏が「これをどうしても観て欲しい」と自らセレクトした時代劇。宮園純子の扮する主人公が、後半になって復讐鬼として覚醒していく姿が盛り上がる。女性の抱える弱さと悲しさ、そしてだからこその強さ。高田脚本が追い求めた女性像の原点といえる作品だ。主人公に篭絡される小松方正、関山耕司、三島ゆり子らの芝居も楽しい。
当時大人気だったブルース・リーにあやかったカラテ格闘映画。だが、あなどってはならない。ピカレスクな魅力に満ちた千葉真一の演じる主人公、その肉体が放つ迫力を存分に活かした小沢茂弘監督の重厚なアクション、天津敏・山本麟一・汐路章らの強烈な敵キャラ、そしてラストの雨中での壮絶な死闘。ハードボイルドなロマンに満ちている。
『激突! 殺人拳』の大ヒットを受けて企画された珍品。千葉真一に続くスターとして新たにやって来たのが山下タダシ。ホンモノの空手家だが、俳優としては素人。しかもアメリカ育ちで日本語も片言。ド迫力のアクションと普段の演技との強烈なギャップが楽しい。コミカルな小芝居で必死に支えようとする、山城新伍の奮闘ぶりにも注目だ。
ヤクザの主催する賭博場から奪取した大金を巡って人間の欲望がぶつかり合う、スリリングな監獄アクション。北大路欣也、太地喜和子、梅宮辰夫、川谷拓三、室田日出男という面々が活き活きと躍動し、先の全く読めないプロットがハラハラドキドキを生む。スティーブ・マックイーンの『華麗なる賭け』を意識して書いたという、小粋な映画だ。
鶴田浩二、菅原文太、松方弘樹、千葉真一といった東映やくざオールスターに佐分利信、高橋悦史、市原悦子といった異色キャストを加えた超大作。各スターに見せ場を用意した脚本により、みんなノリノリの大熱演を見せる。ラストの佐分利・鶴田・市原の芝居も素晴らしいが、なんといっても小池朝雄が凄く、身体を張って強烈なインパクトを残す。
戦前の土佐を舞台に、粗暴なやくざの親分と聡明な養女との相克が描かれる。仲代達矢を筆頭に、夏八木勲、室田日出男、内田良平、綿引勝彦ら男たちの野性味。岩下志麻、夏目雅子、夏木マリら女たちの艶。そして、「なめたらいかんぜよ」を経て最高潮に達する父子のドラマ━━演出・脚本・演技・スタッフワークの全てがハイレベルに絡み合う傑作だ。。
明治時代、囚人を酷使して北海道を開拓する典獄の生きざまが描かれる。狂気の域にまで達した仲代達矢の鬼典獄ぶりがなんといっても強烈だ。それに加え、それぞれに影を抱えた人間たちの愛憎が絡み合う群像劇としても出色だ。雪景色の中で岩下、夏木、早乙女愛といった女性たちも輝くが、露口茂や成田三樹夫といった脇役陣の演技も素晴らしい。
『なめたらいかんぜよ〜脚本家・高田宏治の生きた東映五十年の狂熱』著者
★春日太一さんトークショー開催 (すべて上映後)
3/21(土)
14:00『鬼龍院花子の生涯』
17:10『激突! 殺人拳』
19:25『資金源強奪』
3/22(日)
14:00『妖艶毒婦伝 般若のお百』
16:15『ザ・カラテ』
4/1(水)
14:25『忍者狩り』
16:35『柳生武芸帳 片目の忍者』
4/2(木)
13:50『北の螢』
一般1600円、シニア1300円、学生・会員1200円、ハンディキャップ割1000円
一般3回券4200円、シニア3回券 3600円、学生・会員3回券3300円
※3回券は複数人数で使用不可
※トークショー付きの回は招待券・回数券使用不可
※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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