今回の特集上映では、1940年代から1950年代にハリウッドで作られたアメリカン・フィルム・ノワール、1950年代から1970年代のフランスで作られたフレンチ・フィルム・ノワール、そして数々のフィルム・ノワールの傑作を監督したフリッツ・ラングの作品から選りすぐりの20本を一挙上映！
アメリカンフィルムノワール
拳銃貸します
1942年／アメリカ／80分／デジタル
監督：フランク・タトル／脚本：アルバート・モルツ／原作：グレアム・グリーン／音楽：デイヴィッド・バトルフ／出演：ヴェロニカ・レイク、アラン・ラッド、ロバート・プレストン、レイアード・クレイガー、トゥリー・マーシャル
◆グレアム・グリーン原作を映画化。フィルム・ノワールを代表するファム・ファタール、ヴェロニカ・レイクとアラン・ラッドの黄金コンビが魅せるフィルム・ノワール代表作。依頼主に裏切られ警察に追われる身となった一匹狼の殺し屋。列車で乗り合わせた謎の女と知り合うが、彼女は事件を追う刑事の恋人だった…。
ローラ殺人事件
1944年／アメリカ／88分／デジタル
監督・製作:オットー・プレミンジャー／原作:ヴェラ・キャスパリー／脚本:ジェイ・ドラトラー、サミュエル・ホフェンスタイン、ベティ・ラインハルト／出演:ジーン・ティアニー、ダナ・アンドリュース、クリフトン・ウェブ
◆巨匠オットー・プレミンジャーのデビュー作にして、アカデミー賞撮影賞に輝き監督賞にもノミネートされた傑作。広告代理店に勤める魅惑的な美女ローラが、死体となって発見された。容疑者が3人に絞られるが…。ローラの美しさ、回想シーンの巧みさ、そしてモノクロの繊細な映像美など、まさにフィルム・ノワールの代表作！
深夜の告白
1944年／アメリカ／106分／デジタル
監督・脚色：ビリー・ワイルダー／脚色：レイモンド・チャンドラー／原作：ジェームズ・Ｍ・ケイン／撮影：ジョン・サイツ／音楽：ミクロス・ローザ／出演：バーバラ・スタンウィック、フレッド・マクマレイ、エドワード・Ｇ・ロビンソン
◆名匠ビリー・ワイルダーが、脚本にレイモンド・チャンドラーを迎え監督したフィルム・ノワールの傑作。不倫による生命保険金殺人を描くサスペンス映画の先駆として、その後の映画に影響を与えた。演出、撮影、音楽など、これぞフィルム・ノワールと呼ぶべき見事さ。ウディ・アレンが「史上最高の映画」と賞賛する名作。
恐怖のまわり道
1945年／アメリカ／67分／デジタル
監督:エドガー・G・ウルマー／原案・脚本:マーティン・ゴールドスミス／音楽:アードディ／出演:トム・ニール、アン・サヴェージ、クラウディア・ドレイク、エドモンド・マクドナルド、ティム・ライアン、エスター・ハワード、パット・グリーソン
◆ムルナウの弟子にして、マーティン・スコセッシらに影響を与えた映画作家エドガー・G・ウルマーによる異色のフィルム・ノワール。NYの安クラブの文無しのピアニスト。逃げた女を追ってヒッチハイクでハリウッドへ向かうが…。わずか6日で撮られた低予算映画ながら、B級映画の最高傑作としてカルト的人気を誇る怪傑作！
グレイト・フラマリオン
1945年／アメリカ／78分／デジタル
監督：アンソニー・マン／脚本：ハインツ・ヘラルド、リチャード・ウェイル、アン・ウィグトン／音楽：アレクサンダー・ラズロ／出演：エリッヒ・フォン・シュトロハイム、メアリー・ベス・ヒューズ、ダン・デュリエ、スティーヴン・バークレイ、レスター・アレン
◆西部劇の名匠で、『グレン・ミラー物語』（53年）などのアンソニー・マンが、その名を知らしめることになった初期代表作。助手のために彼女の夫を事故に見せかけて撃ち殺した曲撃芸人の悲劇を描く。人生を狂わされる男を演じたシュトロハイムの圧倒的な存在感と、過去をナレーションで回想する巧みな演出でみせる未公開作。
ミルドレッド・ピアース
1945年／アメリカ／111分／デジタル
監督：マイケル・カーティス／原作：ジェームズ・Ｍ・ケイン／脚本：ロナルド・マクドゥガル／音楽監督：レオ・Ｆ・フォーブステイン／作曲：マックス・スタイナー／出演：ジョーン・クロフォード、ジャック・カーソン、ザカリー・スコット
◆ある夜、地元の名士が殺される事件が起こり、彼の妻ミルドレッドの元夫が逮捕される。凶器の拳銃が彼の物と判明し、アリバイもない中、ミルドレッドだけ彼は犯人ではないと主張するが…。『カサブランカ』のマイケル・カーティスが手掛けたフィルム・ノワール。ジョーン・クロフォードがアカデミー主演女優賞を受賞。
郵便配達は二度ベルを鳴らす
1946年／アメリカ／113分／デジタル
監督：テイ・ガーネット／原作：ジェームズ・Ｍ・ケイン／脚本：ハリー・ラスキン、ニーヴェン・ブッシュ／音楽：ジョージ・バスマン／出演：ジョン・ガーフィールド、ラナ・ターナー、セシル・ケラウェイ、オードリー・トッター
◆安食堂の主人ニックに雇われることになった流れ者のフランク。ニックの美しい妻に惚れたフランクは、不倫関係を続けるうち、保険金目当てにニック殺害を計画する。何度も映画化される名作ミステリーであり、フィルム・ノワールの傑作中の傑作。不義の恋人を演じたジョン・ガーフィールドとラナ・ターナーが素晴らしい！
湖中の女
1947年／アメリカ／103分／デジタル
監督：ロバート・モンゴメリー／原作：レイモンド・チャンドラー／脚本：スティーヴ・フィッシャー／音楽：デヴィッド・スネル／出演: オードリー・トッター、ロイド・ノーラン、トム・チュリー、レオン・エイムズ
◆ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウは、出版社の美人編集長エイドリアンの依頼を受けて、一月前に失踪した社長夫人の消息をつきとめる。ハードボイルドの代表的ヒーローを、本作が初監督となるロバート・モンゴメリーが描く。全編を通してカメラがマーロウの目線で展開する斬新な手法も話題になった驚きの「一人称映画」！？
深夜の歌声
1948年／アメリカ／96分／デジタル
監督：ジーン・ネグレスコ／原案：マーガレット・グルエン、オスカー・ソウル／脚本：エドワード・コドロフ／音楽：シリル・モックリッジ／出演：アイダ・ルピノ、リチャード・ウィドマーク、コーネル・ワイルド、セレステ・ホルム、Ｏ・Ｚ・ホワイトヘッド、ロバート・カーンズ
◆カナダとの国境近くでナイトクラブを経営するジェフティは、親友のピートに店を任せている。店にセクシーな歌手リリーがシカゴからやってくるが…。その後、フィルム・ノワールの監督にもなるアイダ・ルピノ（『ヒッチ・ハイカー』）がリリー役を好演し、ハスキー・ヴォイスのスローなテンポで歌う「アゲイン」に魅せられる。
ボディガード
1949年／アメリカ／62分／デジタル
監督：リチャード・フライシャー／原案：ジョージ・Ｗ・ジョージ、ロバート・Ｂ・アルトマン／脚本：フレッド・ニブロ・Ｊｒ、ハリー・エセックス／音楽：ポール・ソーテル／出演：ローレンス・ティアニー、プリシラ・レイン、フィリップ・リード、ジューン・クレイワース
◆上司を殴り警察をクビになった刑事マイクは、精肉会社の女社長のボディガードに雇われる。誰かに命を狙われてるという社長の警護についたマイクは襲われ、気がつくと自分が殴った上司の死体と車の中にいた！ 多くの傑作フィルム・ノワールや、『ミクロの決死圏』『トラ・トラ・トラ！』を監督したフライシャー、初の犯罪映画！
国境事件
1949年／アメリカ／94分／デジタル
監督：アンソニー・マン／脚本：ジョン・Ｃ・ヒギンズ／音楽：アンドレ・プレヴィン／出演、リカルド・モンタルバン、ジョージ・マーフィ、ハワード・ダ・シルヴァ、ジェームズ・ミッチェル、アルフォンソ・ベドヤ
◆アンソニー・マン監督が、自身の初期の傑作『Tメン』をセルフリメイクしたフィルム・ノワール。アメリカ・メキシコ国境の町を舞台に、労働者を不法入国させる闇組織を摘発するべく潜入捜査を行うふたりの捜査官を描く。浸入捜査の緊張感、サスペンス性、また “闇”の魅惑など、全編ノワール色に彩られたスリリングな傑作。
ヒッチ・ハイカー
1953年／アメリカ／70分／デジタル
監督・脚本：アイダ・ルピノ／脚本：コリアー・ヤング他／音楽：リース・スティーブンス／出演：エドモンド・オブライエン、フランク・ラブジョイ、ウィリアム・タルマン、ホセ・トーヴェイ、サム・ヘイズ
◆友人同士でメキシコに向かう途中で拾ったヒッチ・ハイカーは逃亡中の殺人鬼だった…。不幸な生い立ちと閉じない右目のせいで犯罪に走ったと自己正当化する殺人鬼・マイヤーズの強烈なキャラクターが際立つ。1950年に起こった事件を女優でもあるアイダ・ルピノが映画化。初めての女性監督フィルム・ノワール！
フリッツ・ラング
暗黒街の弾痕
1937年／アメリカ／86分／35mm
監督：フリッツ・ラング／原作・脚本：ジーン・タウン、グレアム・ベイカー／音楽：アルフレッド・ニューマン／出演：ヘンリー・フォンダ、シルヴィア・シドニー、ウィリアム・ガーガン、バートン・マクレーン、ジーン・ディクソン
◆刑務所を出て希望に燃えるエディーは愛するジョーと結婚するが、周囲の心ない偏見によって新生活をぶち壊される…。犯罪を犯した男女の逃避行という映画のひとつのスタイルを打ち立てたラングのとてつもない名作。霧や独房での光と影の表現、喜びとスリル…。すべてが素晴らしい、ラングのアメリカ時代の最高傑作！
マンハント
1941年／アメリカ／105分／35mm
監督：フリッツ・ラング／原作：ジェフリー・ハウスホールド／脚本：ダドリー・ニコルズ／音楽：アルフレッド・ニューマン／出演: ウォルター・ピジョン、ジョーン・ベネット、ジョージ・サンダース、ジョン・キャラダイン、ロディ・マクダウェル
◆第二次大戦直前のドイツ。相手がヒトラーと知らずにライフルを向けてしまった英国軍大尉は、ゲシュタポから追われ、ロンドンに逃げ延びる。そこで、美しい娘と出会い恋に落ちるが…。息苦しくなるほど緊迫感に溢れたサスペンス映画の傑作にして、フリッツ・ラングの『死刑執行人もまた死す』『恐怖省』『外套と短剣』へと続く反ナチ映画第1作。
緋色の街／スカーレット・ストリート
1942年／アメリカ／80分／デジタル
監督：フリッツ・ラング／脚本：ダドリー・ニコルズ／原作：ジョルジュ・デ・ラ・フシャルディール／音楽：ハンス・Ｊ・サルター／出演：エドワード・Ｇ・ロビンソン、ジョーン・ベネット、ダン・デュリエ、マーガレット・リンゼイ
◆実直な中年の銀行員が魅力的な若い美女と知り合ったことからすっかり人生の道を踏み外し、悪夢のような運命をたどるさまを、皮肉なタッチで冷ややかに綴る悪夢のようなフィルム・ノワール。効果的な音響や陰影に富んだ照明、人物造形の見事さなど、フリッツ・ラングの才能が遺憾なく発揮された、ハリウッド時代の傑作！
ビッグ・ヒート／復讐は俺にまかせろ
1953年／アメリカ／90分／35mm
監督：フリッツ・ラング／原作：ウィルアム・マッギヴァーン／脚本：シドニー・ボーム／音楽：ミッシャ・バカライニコフ／出演：グレン・フォード、リー・マーヴィン、グロリア・グレアム、ジョスリン・ブランド、キャロリン・ジョーンズ
◆最愛の妻を何者かによって爆死させられた巡査部長が執念の捜査に乗り出し、ギャングと癒着した署内の腐敗を暴く。恨みから悪に染まってゆくグレン・フォード、娼婦の顔に煮えたぎるコーヒーをぶっかけるリー・マーヴィン、鬼気迫るグロリア・グレアムらの迫力は必見！フリッツ・ラング監督が描くフィルム・ノワールの古典的名作。
フレンチフィルムノワール
最後の切り札
1942年／フランス／105分／デジタル
監督:ジャック・ベッケル／脚本・原案:モーリス・オーベルジュ／脚本：ルイ・シャヴァンス、ピエール・ボスト／音楽:ジャン・アルファロ／出演:レイモン・ルーロー、ミレーユ・バラン、ジョルジュ・ローラン、モーリス・バケ、ピエール・ルノワール
◆南アメリカのある都市で、ギャングのボスの相棒が撃ち殺された。事件を調査することになった新米刑事二人だが、警察とギャングの血で血を洗う抗争へと発展する…。ジャン・ルノアールが師のジャック・ベッケルが戦時下で作り上げた衝撃のデビュー作。伏線に次ぐ伏線など、アメリカン・フィルム・ノワールへの熱狂的な造詣ぶり！
殺られる
1959年／フランス／88分／35mm
監督：エドゥアール・モリナロ／原作・脚本：Ｇ・モリス・デュムラン／音楽：アート・ブレイキー＆ジャズ・メッセンジャーズ／出演：ロベール・オッセン、フィリップ・クレイ、マガリ・ノエル、エステラ・ブラン、ジャヌ・マルカン
◆マルセイユを舞台に、恋人が巻き込まれた人身売買の陰謀に立ち向かう男の活躍を描く。高級売春組織という闇の世界が舞台の、臨場感に満ちたスリリングなサスペンス。フレンチ・ノアールはひと味違う。うらぶれた深夜の街に響くギャングたちの足音、煙草の煙、モダンジャズ、すべてがフレンチ・ノワールの香り！
生き残った者の掟
1966年／フランス／100分／35mm
監督・原作・脚本：ジョゼ・ジョヴァンニ／音楽：フランソワ・ド・ルーベ／出演：ミシェル・コンスタンタン、アレクサンドラ・スチュワルト、ロジェ・ブラン
◆友人との宝探しの冒険から一人生き残ったスタンは、訪れたコルシカ島の売春宿で働かされている謎の女エレーヌを組織の手から救い出すが…。一人の男がたどる心の彷徨と愛を描くフィルム・ノワール。アンリコの『冒険者たち』が気に入らなかった原作者のジョゼ・ジョヴァンニが、自らメガホンを取った渋い一本。
ガラスの墓標
1966年／フランス=イタリア=西ドイツ／90分／35mm
監督：ピエール・コラルニック／原作：Ｆ・Ｓ・ジルベール／脚本：フランツ・アンドレ・ブルジョ／音楽：セルジュ・ゲンズブール／出演：セルジュ・ゲンズブール、ジェーン・バーキン、パウル・ニコラス、クルト・ユルゲンス、ガブリエル・フェルゼッティ
◆“愛のカップル”ジェーン・バーキン、セルジュ・ゲンズブールによる、暴力、麻薬、乱交パーティーなど、衝撃的な題材で鮮烈な印象を与えた異色フィルム・ノワール。あまりにも官能的すぎるという理由で話題を呼んだ二人のデュエット曲『ジュ・テーム、ジュ・テーム』と二人の醸し出すエロティックな雰囲が強烈な作品。