肉体の悪魔
◆17世紀フランスで起きた史上名高い“ルーダンの悪魔憑き事件”を鬼才ケン・ラッセルが正面から切り込んで作り上げた衝撃作。宗教的抑圧がもたらす狂気、腐敗した国家と教会、そして人間の内に潜む悪魔をあぶり出していく。狂乱と淫行の中で発生する“悪魔憑き”…映画史に深く刻まれた狂乱のカルト映画。

映画史のはぐれもの、正統なる映画史にはどうしてもおさまりがきかない異形の存在、そんな作品を集めた裏街道が奇想天外映画祭である。ならばそこにもっともふさわしいのが『闇の中の魑魅魍魎』だ。中が見えない漆黒の闇の中に潜む、得体のしれない怪物たちが次から次へとあらわれる。奇想天外映画祭とはそんな場所ではなかろうか。
今回、満を持して、日本映画としてはじめて奇想天外映画祭に登場することになった『闇の中の魑魅魍魎』は1971年のカンヌ映画祭に出品された大問題作だ。高知の異能の画家「絵金」こと金蔵の彷徨を鬼才中平康が描いた本作は、生々しく血塗られた描写が大いに物議をかもし、初公開以降ほぼ忘れられた存在となっていた。そもそも中平康はモダニストとして高く評価され、太陽族映画『狂った果実』ではヌーベルバーグに先駆け、トリュフォーらに強烈に影響を与えた天才監督としてフランスにまで名を轟かせた。『月曜日のユカ』の都会的洗練、『牛乳屋フランキー』や『危いことなら銭になる』のスラップスティックなコメディ・センス。だがそのすべてを捨てさり、自分のプロダクションを設立して泥臭く足掻いてみせたのが『闇の中の魑魅魍魎』なのである。そこには「嘘をつきたくない」からと、目をかけてくれた恩師も、名門流派の教養もすべてを裏切り、なげうつ金蔵の軌跡が重ねられる。人間の真実を求め、残酷絵図を追いつづける金蔵の業と、入魂の一作を封印されてしまった天才中平康の無念に思いを馳せずにはいられない。
金蔵を演じた麿赤兒も、中平と同じように自分のすべてを金蔵役に注ぎこむ大熱演を見せた。その思いを継ぐかのように、林海象が26年後に撮ったドキュメンタリー、『ちんなねえ』でも絵金として登場する。高知県立美術館が大駱駝艦の舞踏公演を記録するために製作した作品だが、舞踏公演自体が美術館の「絵金展」関連企画として委託されたものであり、必然的に『闇の中の魑魅魍魎』へとつながる地下水脈を形成している。麿赤兒も、絵金も、そして林海象も、特別出演の原田芳雄も、魑魅魍魎の一部なのである。
さらに物議をかもす作風で知られるケン・ラッセルにしてもっともスキャンダラスな問題作『肉体の悪魔』も満を持して登場する。十七世紀の実在の悪魔憑き事件を最高に露悪的に派手に、つまりケン・ラッセルらしく映画化した騒々しくも荘厳な傑作である。これ以外も過去に奇想天外映画祭として話題を呼んだ作品が並んでおり、いわばベスト集のおもむきがある。1975年のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞作『くすぶりの年代の記録』も、映画の完成度にもかかわらず幻の作品となってしまった一本である。あまりに政治的に同時代的であったために、忘れられていた映画だ。だが、タイムカプセルの奥底から引っ張り出された有名無名さまざまな魑魅魍魎たちの中に混ざれば、それはまさに現在の映画になるだろう。それにしてもカンヌ映画祭で無冠に終わった映画と、パルム・ドール作品が同列に並んでいるのが奇想天外の奇想天外たるゆえんである。
◆17世紀フランスで起きた史上名高い“ルーダンの悪魔憑き事件”を鬼才ケン・ラッセルが正面から切り込んで作り上げた衝撃作。宗教的抑圧がもたらす狂気、腐敗した国家と教会、そして人間の内に潜む悪魔をあぶり出していく。狂乱と淫行の中で発生する“悪魔憑き”…映画史に深く刻まれた狂乱のカルト映画。
◆スコットランドの禁断の孤島に行方不明の少女の捜索のために降り立ったハウイー警部が目にしたものは想像を超えた、天外魔境の世界だった。2013年、監督のロビン・ハーディーは自ら再編集して6分長いこのfinal cutヴァージョンを完成させた。カルト映画の巨人の完成だ。
◆舞台はベルギーの港町オステンドのホテル。宿泊した新婚夫妻が、優雅で ミステリアスな伯爵夫人に出会ったことから引き込まれていく禁断の世界を、奇想と恐怖、独特のエロティシズムをふんだんに盛り込んで描き、“『血とバラ』以来のアーティスティックなヴァンパイア映画”と賞賛された。怪奇幻想映画の巨匠ハリー・クーメルの代表作であり、主演のセイリグの銀色に輝くミステリアスな妖しさに酔いしれる奇想吸血鬼映画。
◆「革命における最も偉大な力は<希望>である」1937年のスペイン内戦を舞台に反乱軍と市民たちの激しい戦い。テルエルの山中にも反乱軍が建設中の飛行場が発見され麓の市民と共和国軍は飛行場爆破のため必死の作戦を展開していくが……。アンドレ・マルローが監督した唯一の映画であり、戦火の中で敢行したリアルなドキュメンタリーに近い映像は、ネオリアリズモの先駆的作品と評価された。
◆インド西部のラジャスタンを出発点に、アジア、アラブ、ヨーロッパと8カ国にまたがり長い流浪の旅についたロマ(ジプシー)。映画は彼らの奥底から湧き上がる音楽を通してジプシーの歴史と民俗を語りつくしていく。監督自らのルーツであるロマへの限りない讃歌、それはラストの“魂の叫び”ともいうべきジプシー音楽と踊りにこめられている。魂を揺さぶる快作、と言えようか。
◆「映画史上唯一無二の存在」と評されて久しい、この奇跡の怪作は90年を超えて、今なお燦然と輝き続けている。出演者フリークたちと同じ目線で作りあげた監督ブラウニングの洞察力とフリークに対する深い愛情が全編に満ち溢れている、これこそがこの作品輝ける存在意義だ。
◆18歳でアルコールとドラッグ中毒を克服しようとスイスのサナトリウムに入院した男が体験する幻想の世界をシュールな凝った映像で描いた『チャパクア』はコンラッド・ルークスの実体験に基づいた処女作だ。生涯に2本の作品を残して(もう1作は『シッダールタ』)忽然と表舞台から姿を消し、後年はタイに居を構えていたというルークスの痛烈なアメリカ文明批判ビートニク映画だ。
◆同居女性との喧嘩でアパートを飛び出した女性が叔母の経営するホテルに逃げ込んだことから巻き起こされるこの作品のプロットは、あたかもヒッチコックの『サイコ』を想起させる異様な展開だ。全編、奇想天外人間が次々登場、アッと言わせるラストまで目を離せない。『デス・レース2000年』で知られる異色の監督ポール・バーテルの処女怪作。
◆衝撃的なスナッフ・ムービーの撮影シーンからスタートするこの作品は”異常なシリアル・キラー”をテーマにしたことから、酷評され長きにわたって映画史の闇に葬り去られてきた。70年代に入り、スコセッシが賞賛したことから評価され始め、“サイコ・スリラー映画の原点”と刻まれている。
◆アルジェリア建国の苦難の歴史を「灰の都市」「荷車の年」「くすぶりの年」「虐殺の年」という4つのテーマに分けて1954年の独立戦争までを描いた壮大な歴史ドラマ大作。随所に登場するストーリー・テラー“MadMan”はアルジェリアの歴史を突飛な言葉で語りかけていて興味深い。
◆ドイツのハンバーガーショップでノイズ音楽を撒き散らして人々を洗脳化して暴徒化させていく事態を創作していた青年FMは、ノイズで神経に異変を起こした人々に、追い込まれていくのだが…。伝説のジャーマン・カルト珍奇作。
◆小さな宇宙船がニューヨークに着陸した。サイケデリックなネオンカラーに彩られた奇怪で気取った世界。エイリアンたちは麻薬の陶酔を求めて、ヘロインからさらには人間のオーガニズム絶頂期に脳内で分泌されるという快楽物質を追い求めている。輝きを失っていくニューヨーク、セクシュアリティの解放、性暴力への復讐、そしてセックスに取り憑かれた男たちは絶頂に達すると消滅する…。80年代が生んだ、カルトの枠を超えたぶっ飛びSFミッドナイト・ムーヴィー。
◆メキシコ、ゲレーロ州の海沿いの村、サン・ヘロミート。この村はヤシの実の栽培で成り立っている。主人公オリヴェリオは結婚式の当日、母の容態が突然悪くなったことから、彼はとある事情で隣町までバスで出向くことになる。危険な山道をひた走るバスにあっと驚く珍事が次々と降りかかってくる…。メキシコ時代のブニュエル・ワールド満載の珍快作。
◆舞台は1970年代のパリ。テンプル騎士団の秘宝を狙って”赤い仮面”の男が率いる仮面軍団とゾンビ軍団が共闘して挑むのだが…。フランジュの遺作となった本作は、自身の『ジュデックス』(1963)の流れをくむ荒唐無稽なアクション活劇の一編。
◆高知県立美術館の開館3周年企画としてプロデュースされた舞踏公演「トナリは何をする人ぞ』をフィーチャーした異色のドキュメンタリー。林監督は約90分の舞台のエッセンスを30分に凝縮し、そこに探偵や謎の美女、絵金などが登場するフィクションを絡めて摩訶不思議な作品に仕上げた。
◆幕末土佐に活き、権力に抗しながら自己を貫いた異端の天才絵師金蔵(絵金)の半生を描いた問題“快作”。初公開から54年、デジタルリマスターで甦った圧巻の映像美と絵金役の麿赤兒の怪演がひときわ胸を打つ。(提供:ディレクターズシステム)
『闇の中の魑魅魍魎』 一般1800円、シニア1300円、会員・学生1200円、高校生以下・ハンディキャップ1000円
その他 一般1600円、シニア1300円、会員・学生1200円、高校生以下・ハンディキャップ1000円
『ちんなねぇ』 1200円均一
一般3回券4200円、シニア3回券3600円、会員3回券3300円
※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
オンラインチケットはこちら