伊藤高志 略歴

1956年福岡生まれ。大学在学中、松本俊夫ゼミで発表した実験映画『SPACY』(81)が国内外の映画祭で絶賛される。超現実的な視覚世界や人間に潜在する狂気や不条理を追求。近年は劇映画の制作に加え、身体表現とのコラボレーションやインスタレーション作品など表現の幅を広げている。

怪談のような、実験映画。
実験映画の歴史を塗り変えた世紀の映像作家が描く幻視の物語。

2000年代以降、視覚的な幻惑や日常の変容など、それまでに手掛けた実験映像作品のテーマやコンセプトを発展させながら、フィクションの実験に没頭してきた伊藤高志の初の劇映画特集。「映画における虚構とは? 語りとは?」それらは同時に映画の構造を主題にしたアート作品でもある。海外でも評価の高い最新作『遠い声』をはじめ、初の長編作品『零へ』の他、全4作品を上映し、伊藤高志が生み出す幻想と幻視の物語世界にフォーカスする。

 

上映作品

 

遠い声 <最新作>

2024年/53分/デジタル/カラー/出演:郡谷奈穂、池末朱莉/音響:稲垣貴士、伊藤高志
協力:北本楓斗、楢崎由依子、大日方欣一、久保瑞季、山本宰、中原千代子、黒岩俊哉、林ケイタ、脇原大輔

◆この作品は二人の女性が登場する。分身のような二人はそれぞれが同じチェキカメラを持ち歩き、一人は異様な気配にレンズを向け、一人は黒のワンピースを様々な場所に吊るして撮影している。二人はその彷徨いの中でお互いの存在を探し求めているようにも見えるが声は届くことがない。日常的な時間・空間を超越して二人の行動を描くこと、見つめ合うという強い視線の交差はあるものの二人は決して触れ合うことができないという空虚感を描くことでこの世界の不確実性を描きたいと思った。最近の戦争や環境問題、AI に想像される狂気性といった、恐ろしい気配に満ちた時代になってきたという底知れぬ不安を背景に、現実と虚構の境目が不明瞭になってきた時代を私なりに表象してみた。

 

零へ

2021年/72分/デジタル/カラー/出演:原田伸雄、高橋瑞乃、天津孔雀、松田美和子、久保瑞季、笹原侑里/音響:荒木優光、伊藤高志
イメージフォーラム・フェスティバル2021寺山修司賞受賞 

◆映像はスクリーン上に強い存在感を描き出すと共に、それは単なる虚像さという不在感を思い知らす残酷なメディアである。映像が持つこの両義性こそに私は強く興味を抱く。今回の作品は「死」をテーマに映画を撮ろうとする女子大生、「死体」を捨てるために放浪する中年の女、「死の影」に怯える老人という死にまつわる3つの物語と、それらに出演したキャストのインタビューを交えた作品だが、虚実、生死、存在といった境界が溶解することで現れる不穏を強く描くことで、私たちが生きている世界は不確実性に満ちていることを暗示させたいと思った。

 

最後の天使

2014年/33分/デジタル/カラー/出演:村上璃子、上川周作、大谷悠、松尾恵美、早川聡/音響:荒木優光/撮影協力:竹内彩夏、坂口和

◆人が人と出会い関係を生み出していくという劇映画の常識的な話法を踏襲しながら、1つの物語として収束していくのではなく、拡散し、混沌としたイメージの海へ放り投げ出されるような映画をめざした。2組のカップルの不穏な関係。彼女は私の妄想なのか、それとも私の方が彼女の妄想なのか、その境界は曖昧になり、存在に対する不安が次第に高まっていく。

 

甘い生活

2010年/23分/デジタル/カラー/出演/寺田みさこ、原田衣織、吉田良子/音響:荒木優光/撮影協力:豊永丈尋、川村圭、野田真理子、村上唯

◆死に場所を探しているのか? ただひたすら街をさまよい歩く喪服を着た女の物語と、破壊的な行為に明け暮れる少女の物語が交錯し溶け合い混沌としていく様を描く。少女は女の悪夢なのか? または女の方が少女の妄想なのか? 夢と現実の境界、内面と外部世界の境界、生と死の境界、光と闇の境界、そんな境界と呼ばれるものが喪失することで生まれる不安定で希薄な存在感を描きたいと思った。

 

【伊藤高志 短編集1】
SPACY

1981年/10分/モノクロ&カラー
音響:稲垣貴士

◆九州芸術工科大学の松本俊夫ゼミで作った16ミリ映画処女作。体育館内に置かれた写真パネルに技術的には突入できるはずですと松本先生にプレゼンした時、発想は面白いけどできるの?と言われ、その視覚運動の実現のために死に物狂いになった作品。突入したラッシュを見た時に驚きは忘れられない。


BOX

1982年/8分/モノクロ&カラー
音響:稲垣貴士

◆立方体のそれぞれの面に風景写真を貼りつけコマ撮りした。箱は永遠に回転しているように見えるが、実際は90度しか回転していない。この視覚のトリックは『SPACY』と基本は同じである。立体から平面へ、またその逆へと空間の認識の錯乱がねらい。

 

THUNDER

1982年/5分/カラー
音響:稲垣貴士

◆長時間露光による全編コマ撮りの16ミリ映画。大学の校舎内で10日間ほど毎晩7〜8時間、夜が明けるまで撮影。スライドプロジェクター(ポジフィルムの写真を1枚ずつ投影)で女性の顔を壁面に投影し、懐中電灯やストロボを持った友人たちが走り回るという現場で、時々松本先生が覗きにきては「ホラー映画?」とからかってくれた。

 

DRILL

1983年/5分/モノクロ
サイレント

◆西武百貨店入社1年目に手がけた写真のコマ撮り作品。社会人になっても映画を作るという気概で作った16ミリ映画。空間を異様に歪ませる方法を写真アニメで実現できると年中思いつきいつか映像にしたいと思っていた。映像の素材を全社築の玄関に限定したのは日常美さが非日常化する落差を際立たせたかったため。


GHOST

1984年/6分/カラー
音響:稲垣貴士

◆『THUNDER』制作時に思いついた、像を宙に浮かすアイデアを実現したくてこの作品を作った。全編長時間露光によるコマ撮り撮影。当時住んでいた会社の寮で仕事から帰って夜撮影、朝2時間ほど寝て出勤するという生活が続き死にそうになった。

 

GRIM

1985年/7分/カラー
音響:稲垣貴士

◆室内の様々なモノからその表皮のみが剥ぎ取られ宙を漂い他のモノに貼りつくというアイデアの『GHOST』制作時に思いつきこの作品でふくらませてみた。この作品も全編長時間露光のコマ撮り。GRIMとは“ぞっとするような”という意味。

 

写真記

1986年/3分/カラー
サイレント

◆8ミリフィルム作品は、そのほとんどが福岡で開催されている3分間映画特集『パーソナル・フォーカス』のために制作したものだ。この作品は日頃撮りためておいた日記的写真をラフな気分でアニメートしたもの。


WALL

1987年/7分/カラー
音響:稲垣貴士

◆インテリア会社の15秒CMとして手がけたものを発展させて完成させた作品。手に持った写真のフレームの中でレンガ造りの巨大な倉庫が激しく半回転の往復運動を繰り返す。写真という平面性を壊しながらそのフレームにダイナミックな奥行き感を作りたかった。

 

写真記 ’87

1987年/3分/カラー
サイレント

◆日常の様々な出来事に目をむけてその時の自分の気持ちを告白してゆくような日記映画に、自分ならではのトリッキーな手法で描きたいと思った。親戚の結婚式の写真、自宅の窓から見える景色、旅の記録写真などを様々な技法でコマ撮りしていった。

 

悪魔の回路図

1988年/7分/カラー
音響:稲垣貴士

◆屋根の間から1本だけそびえ立つ60階建ての高層ビルが物凄いスピードで回転する映画。高層ビルを中心にした半径4〜500mの円周を48分割し、その地点から写真を撮りそれらの素材をコマ撮りしていった。当初富士山でやろうと思ったがその労力を想像してあきらめた。


ミイラの夢

1989年/5分/モノクロ/サイレント

◆表層的な美の裏側はすべてが腐敗してしまっているという都会のイメージを映像化。人の姿が消えた街の風景や廃墟ばかりが掲載されたような建造物など、“死”のイメージを探すため東京都内をくまなく歩き回って撮った写真を素材にアニメートした。

 

 

【伊藤高志 短編集2】
12月のかくれんぼ

1993年/7分30秒

◆竜太5才。自分の息子にもかかわらず時々この小さな人間は自分の何なのかと思うことがある。喜び悲しむ表情を見ていても、抱きかかえた時のぬくもりを肌で感じても、私の感情がぽかんとする瞬間がある。


THE MOON

1994年/7分/カラー/音響:稲垣貴士

◆むかし夢の中によく出てきた、月明かりに浮きあがる神秘的で不気味な風景。たとえば夜空に浮かぶちぎれた雲の塊が月光に照らされ、その上をまっ黒な物体がゆっくり回転しながら飛んでゆくとか……。この言いしれぬ快感に満ちた不条理な風景、空間。

 

ZONE

1995年/12分/カラー/音響:稲垣貴士

◆顔のない男についての映画。手と足をロープで縛られ不具の男は、白い部屋の中で微動だにしない。妄想に取りつかれた男は、改造された私の自我でもある。自己の内面を表した部屋の中の奇妙な場面の数々。記憶と悪夢と、暴力的イメージを関連づけることを試みた。

 

ギ・装置M

1996年/6分/カラー/サイレント/出演:森村泰昌

◆1996年4月6日〜6月9日に横浜美術館で開催された、森村泰昌展のために制作された。「7年目の浮気」のマリリン・モンローに扮した森村泰昌をモデルに撮影。森村、モンロー、女優、偽装、虚飾、セックス、死といったキーワードから受けるイマジネーションを映像化した作品。


モノクローム・ヘッド

1997年/10分/カラー/音響:稲垣貴士/出演:山中龍一、安部まりか、児玉一成

◆映画を学ぶ青年が、それだけ撮影しても作品の方向性も結末も見えず、混乱し追い詰められてゆくという物語が背景にあり、この作品ではまさにその青年が狂い始めた光景のみで映画を成立させようと思った。この設定では何が起こってもいいし時系列の整合性も無視できるという自由度が高いかなり楽しい現場だった。

 

めまい

2001年/13分/カラー/音響:木津裕史/協力:湯浅弘章/出演:竹中みのり、久保めぐみ

◆前作『静かな一日』のラスト、鉄橋の上で自分に8ミリカメラを向ける女の子は、映画で直接的には描かれていないが、投身自殺をはかる。その様子を偶然見ていた二人の女の子のもう一つの壊れた心の状態を描く。職業病接することの多い若い人達の心の病や、私自身の最近よく感じる精神状態の不安定さから湧いてくる様々なイメージを繋いでみた。

 

静かな一日・完全版

2001年/13分/カラー/音響:木津裕史/協力:湯浅弘章/出演:竹中みのり、久保めぐみ

◆前作『静かな一日』のラスト、鉄橋の上で自分に8ミリカメラを向ける女の子は、映画で直接的には描かれていないが、投身自殺をはかる。その様子を偶然見ていた二人の女の子のもう一つの壊れた心の状態を描く。職業病接することの多い若い人達の心の病や、私自身の最近よく感じる精神状態の不安定さから湧いてくる様々なイメージを繋いでみた。

 

イベント

6/6(土)15:45 Aプロ『遠い声』『最後の天使』の回上映後
ゲスト:伊藤高志監督、西尾孔志さん(映画監督)

 

6/7(日)15:45 Bプロ『遠い声』『甘い生活』の回上映後
ゲスト:伊藤高志監督

入場料金

当日券

一般1600円、シニア1300円、会員・学生1,200円、高校生以下・ハンディキャップ1000円


※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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