反万博特集上映
『反万博の思想 加藤好弘著作集』の刊行を記念して、大阪の地で3日間にわたり「反万博特集上映」を開催致します。加藤好弘監督作品『いなばの白うさぎ』(1970年、オリジナル版)の他、同時代の映画作家の作品上映を通して「反万博の思想」に迫ります。
また、各プログラム上映後には、映画や現代美術、社会思想の研究者など、多方面からトークゲストをお招きします。
上映作品
加藤好弘『いなばの白うさぎ』(1970年、オリジナル、132分)
◆1960年代にさまざまなアングラ映画に出演してきた〈ゼロ次元〉の加藤好弘が、〈万博破壊共闘派〉の活動以後、人間存在そのものの解放をテーマとして、〈ゼロ次元〉の活動の総決算として制作された。カメラにおおえまさのりを迎え、1970年以後の新たなる共同体のビジョンを提示する。
加藤好弘『いなばの白うさぎ』(1970年、スペシャル・エディション[2017年]、二面マルチ、46分)
◆オリジナルの『いなばの白うさぎ』とゼロ次元のパフォーマンス記録映像を編集し、二面マルチで構成された「儀式」装置としての映画。加藤は晩年まで編集を重ね、自身のアジテーションとともに本作の上映を続けた。
岩田信市『THE WALKING MAN』(1969年、15分)
◆名古屋の町を岩田自身が歩く姿を同じ速度でカメラが側面から捉え続けた作品。岩田の歩行行為とドラム音の変動は、観るものを名古屋の大衆・風俗からトリップへと誘う。冒頭の「THE END LESS」のテロップが象徴する街頭をただ歩き続けるという普遍的な行為は、やがて映像による造形表現のみならず、日常性の拡張へとひらかれていく。
岩田信市『愛の浅間山荘』(1972年、サイレント、16分)
◆1972年に起きた浅間山荘事件にインスピレーションを得て、岩田のイマジネーションから浅間山荘の出来事にエロスの解放が交差されていくパフォーマンス作品。
岡部道男『クレイジー・ラブ』(1968年、93分)
◆1960年代、既成の価値観を横断していく審美的で独特な感覚がうまれた。スーザン・ソンタグが「キャンプ」と呼んだこの名づけ難い感覚は、ヒッピー文化やアングラ文化と結びついていく。日本のアングラ映画作家の代表格・岡部道男の作品は、目に見えない地下(アンダーグラウンド)から蠢くキャンプな感覚で溢れている。
末永蒼生
『幻のブラックフェスティバル 新宿番外地編』+
『10月21日 夜 新宿』(1968年、二面マルチ、サイレント、13分)
◆1968年10月20日に「アングラポップ」で行なわれたパフォーマンスの映像と、翌日の21日に同じく新宿の街で起こった国際反戦デーのデモ隊の映像が、二面マルチで流されていく。末永の身体をとおして記録された2つの画面からは、芸術と政治の垣根を越えていくアヴァンギャルドとして、やがて交差する闘争のスタイルが見えてくる。
『ベトナム反戦・安保粉砕・沖縄闘争勝利・佐藤訪米阻止統一行動』(1968年、サイレント、4分)
◆デモの集まった群衆を捉える中で、「生」そのものを解き放つ身振りとしての表現が映し出される。本作からは、今を生きるわたしたちに豊かな想像のエネルギーが浴びせられることだろう。
おおえまさのり『Great Society』(1967年、六面マルチ、17分)
◆先鋭的な映像集団「ニューズリール」に参加した映画作家おおえまさのりによる作品。冷戦、ヴェトナム反戦、学生運動、核爆発などの映像が、サイケデリックな音楽と6台の映写機によって万華鏡のように出現する。本作は、1969年に大阪城公園で行なわれた「ハンパク」においても上映された。
金井勝『無人列島』(1969年、48分)
◆映画作家金井勝の独創性の中に〈ゼロ次元〉が登場するアングラ映画の傑作。その内容と形式において他に例のない独自な作品は、大きなインパクトを世界に与え続けている。金井は本作を皮切りに、『GOOD-BYE』(1971)、『王国』(1973)という「微笑う銀河系・三部作」をつくりあげた。本作は当時、「万博粉砕大会」の現場で上映されている。
足立正生『略称・連続射殺魔』(1969年、86分)
◆1968年に、東京、京都、函館、名古屋で起きた射殺事件の「連続射殺魔」永山則夫。当時19歳の少年だった永山の生い立ちから逮捕までを、「彼」が目にしたであろう風景から映し出す異色のドキュメンタリー。映画には万博開催で湧く市街が映し出されている。
スケジュール
9月5日(金)
Aプログラム 19:00
加藤好弘『いなばの白うさぎ』(1970年、オリジナル、132分)
※作品には一部過激な表現が含まれますのでご注意ください。
★上映前トーク 細谷修平さん(『反万博の思想』編者、美術・メディア研究)
9月6日(土)
Bプログラム 11:30
加藤好弘『いなばの白うさぎ』(1970年、スペシャル・エディション[2017年]、二面マルチ、46分)
※作品には一部過激な表現が含まれますのでご注意ください。
岩田信市『THE WALKING MAN』(1969年、15分)
岩田信市『愛の浅間山荘』(1972年、サイレント、16分)
★上映後トーク 高橋綾子さん(現代美術評論)
Dプログラム 13:50
岡部道男『クレイジー・ラブ』(1968年、93分)
★上映後トーク 宮田有香さん(戦後芸術資料保存/padoco)
9月7日(日)
Cプログラム 11:30
末永蒼生
『幻のブラックフェスティバル 新宿番外地編』+『10月21日 夜 新宿』(1968年、二面マルチ、サイレント、13分)
『ベトナム反戦・安保粉砕・沖縄闘争勝利・佐藤訪米阻止統一行動』(1968年、サイレント、4分)
おおえまさのり『Great Society』(1967年、六面マルチ、17分)
金井勝『無人列島』(1969年、48分)
★上映後トーク 中村葉子さん(映画研究)、原口剛(社会地理学・都市論)、細谷修平(『反万博の思想』編者)
Eプログラム 14:00
足立正生『略称・連続射殺魔』(1969年、86分)
★上映後トーク 酒井隆史さん(社会思想、都市史)
トークゲスト紹介
細谷修平さん(『反万博の思想』編者、美術・メディア研究)
1960年代70年代の芸術と政治、メディアを研究テーマとして、さまざまな地域で資料の調査や保存活動を展開している。一般社団法人 戦後芸術資料保存代表理事、和光大学客員研究員。
高橋綾子さん(現代美術評論)
戦後前衛美術への関心から、「アンデパンダン・アート・フェスティバル」(長良川アンパン、1965年)の調査をライフワークとし、批評の役割についても研究。芸術批評誌『REAR』の編集・制作を継続。美術評論家連盟会員、名古屋造形大学教授。
宮田有香さん(戦後芸術資料保存/padoco)
1960年代に多くの前衛芸術家たちが展覧会を行なった「内科画廊」の調査研究をライフワークとする他、美術資料、社会運動資料のデータベース化に取り組んでいる。2022年、一般社団法人 戦後芸術資料保存の立ち上げに参加。
中村葉子さん(映画研究)
主として日本ドキュメンタリストユニオン(NDU)の研究に取り組み、映画と政治をめぐって映画研究を行なっている。また、釜ヶ崎の労働福祉センター閉鎖前後の運動現場などにも関わる。大阪公立大学客員研究員。
原口剛さん(社会地理学・都市論)
フィールドワーク研究と都市論研究から、現代都市の社会地理を探究している。釜ヶ崎や港湾の戦後史、野宿者のコミュニティなどをフィールドとする研究活動を行ない、社会・空間的排除のメカニズムの解明や社会運動の動態を記述している。神戸大学大学院教授。
酒井隆史さん(社会思想、都市史)
著書に『スネーク・ピープル』、『通天閣』、『暴力の哲学』、『完全版 自由論』、『賢人と奴隷とバカ』など。訳書にD・グレーバー『負債論』(共訳),『官僚制のユートピア』、『ブルシット・ジョブ』(共訳)、グレーバー+D・ウェングロウ『万物の黎明』、P・クラストル『国家をもたぬよう社会は努めてきた』などがある。大阪公立大学教員。
入場料金
当日券
一般1900円、シニア1300円、会員・学生1200円、ハンディキャップ・高校生以下1000円
(回数券・招待券使用不可)
※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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