フランスの恐るべき巨匠が放つ、サイコ・サスペンスの傑作
ヌーヴェル・ヴァーグの旗手として、サスペンスやミステリーの巨匠として、半世紀にわたってフランス映画界をけん引してきた映画監督、クロード・シャブロル。長編だけで54本の作品を遺したシャブロルとあって、我が国では未公開の隠れた傑作も多いが、人間存在への皮肉めいた眼差し、恐怖とユーモアの絶妙なバランス、モラルや常識をいとも簡単に飛び越えて描かれる、研ぎ澄まされた物語の数々は決して色あせることなく、先の見えない現在だからこそより一層輝く。上映される3本は長いキャリアの中でも黄金期と言って過言ではない、1960年代後半から70年に発表された、当時シャブロルの妻だったステファーヌ・オードラン主演によるサスペンスの極上作ばかり。しかも『不貞の女』『肉屋』は、特集上映を除き待望の日本初公開となる。2026年の幕開けにふさわしいシャブロルの官能的で濃密な映像世界にぜひ溺れてください。
クロード・シャブロル Claude Chabrol
1930年パリ出身。大学時代にシネクラブやシネマテークに入り浸り、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメールらと知り合う。フリッツ・ラングとアルフレッド・ヒッチコックの熱狂的ファンとなり、50年代は「アール」誌、「カイエ・デュ・シネマ」誌に寄稿、20世紀フォックスの支社で宣伝も担当。ジャック・リヴェットの短編第一作『王手飛車取り』(56)に製作・脚本・出演で参加。1958年、長編第一作『美しきセルジュ』を監督。翌59年にはゴダール『勝手にしやがれ』に監修の名目で参加したほか、『二重の鍵』、『いとこ同志』を発表。後者でベルリン映画祭金熊賞を受賞し、一躍注目を浴びた。以後ほぼ毎年のように監督作を発表。他の主な作品に『気のいい女たち』(60)、『殺意』(66)、『主婦マリーがしたこと』(88)、『ボヴァリー夫人』(91)、『石の微笑』(04)、『引き裂かれた女』(07)など。2010年、パリにて死去。
上映作品
©Les films La Boëtie
女鹿 Les Biches
1968年 / フランス・イタリア / カラー / 99分
脚本:クロード・シャブロル、ポール・ジェゴフ 撮影:ジャン・ラビエ 音楽・ピエール・ジャンセン
出演:ステファーヌ・オードラン、ジャクリーヌ・ササール、ジャン=ルイ・トランティニャン
支配者、被支配者であり、分身のようでもある、女ふたりの濃厚かつミステリアスな関係を軸に、映画そのものが愛と憎しみをむき出しにした強烈な蠱惑をはなつ、シャブロルの“絶頂期”の傑作。ある日、セーヌ川に架かるポン・デ・ザールの路面に絵を描いている娘、ホワイを見そめたブルジョワの女、フレデリック。フレデリックの屋敷に住むことになったホワイは客として訪れたポールに惹かれるが、ポールはフレデリックとも関係を持ち…。複雑で曖昧な女たちのこころに満たされた官能的な作品。本作では既にシャブロル夫人だったステファーヌ・オードランが、前夫ジャン=ルイ・トランティニャンと共演を果たしている。
©Les films La Boëtie
不貞の女 La Femme infidèle
1969年 / フランス・イタリア / カラー / 98分
脚本:クロード・シャブロル 撮影:ジャン・ラビエ 音楽・ピエール・ジャンセン
出演:ステファーヌ・オードラン、ミシェル・ブーケ、モーリス・ロネ
多くの批評家によって大絶賛され、シャブロルの最高作の一本と呼び声高いだけでなく、シャブロル自身にとっても最大の自信作。保険会社の重役シャルルは妻エレーヌと息子と共に幸せな毎日を送っているが、ある日、エレーヌが作家ペガラと浮気していることを突き止めてしまう。ペガラの家を訪れ、最初は平静を装うシャルルだったが、次第に怒りに駆られ…。アニエス・ヴァルダ『幸福』、ジャック・ドゥミ『シェルブールの雨傘』、そして今回上映される全3作の撮影を手がけるジャン・ラビエの洗練された映像美、名優たちの共演、繊細極まる心理描写と、あっと驚く暴力性を切り取った屈指の傑作スリラー。
©Les films La Boëtie
肉屋 Le Boucher
1970年 / フランス・イタリア / カラー / 93分
脚本:クロード・シャブロル 撮影:ジャン・ラビエ 音楽・ピエール・ジャンセン、ドミニク・ザルディ
出演:ステファーヌ・オードラン、ジャン・ヤンヌ、アントニオ・パッサリア
フランス南西部の村で小学校の教師を務めるエレーヌは、孤独を抱えた肉屋のポポールと結婚式で隣あい、急速に親しくなる。一方、村で次々と起こり始める残忍な殺人事件。ある日、生徒たちとピクニックに出かけたエレーヌは惨殺死体を発見するが、傍らに落ちていたライターはエレーヌがポポールにプレゼントしたものとそっくりだった…。のどかな片田舎での日常に出現する異様な事態──花束に似た肉、パンに滴る血──人を愛しきることができない女、そして果てしない闇を抱えた人間がしぼり出す、一瞬の限りない切実さ。奇妙な切なさに放り出されるクライマックスも秀逸な、これぞシャブロル流愛の犯罪劇。
イベント
4/5(日)20:15『肉屋』上映後トーク
ゲスト:渋谷哲也さん(ドイツ映画研究)
入場料金
当日券
一般1900円、シニア1300円、学生・会員1200円、ハンディキャップ1000円
※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
オンラインチケットはこちら
スケジュール
