TBSレトロスペクティブ映画祭



 

 

かつてこの国を挑発した名作ドキュメンタリーが、60年の時を経てスクリーンに甦る

劇作家、詩人、歌人、映画監督・・・マルチクリエーターとして活躍した寺山修司。
テレビ作家としてもその才能を開花させていた。60年の時を経てTBS収蔵の貴重なアーカイブが紐解かれる。時代の寵児として、時に市井の人々と向き合い、時に国家に刃をむけ、彼は何を伝えたかったのか?

鬼才・寺山修司、その軌跡を辿る珠玉の5番組、そしてその影響を色濃く受けた令和のドキュメンタリーも2作品上映する。(作品解説:佐井大紀)

上映作品

あなたは・・・・・(デジタル修復版)

あなたは・・・・・(デジタル修復版)1966年11月20日放送
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
音楽:武満徹

◆「あなたにとって幸福とは何ですか?」ハンドマイク一つしか持たない素人の女子大生が、まるで機械のように、決められた17の質問を町ゆく人にぶつけていく。フランスの映画監督・人類学者ジャン・ルーシュの「シネマ・ヴェリテ」に影響されたディレクター萩元晴彦が、盟友・寺山と仕掛けた記念碑的作品。デモ隊の先頭、挙式中の花嫁、在日米兵など取材対象は様々。しかしなぜだろう、それらの問いは、観客である我々自身に向けられている気がしてならない。

 

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日の丸(デジタル修復版)

日の丸(デジタル修復版)1967年2月9日放送
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦

◆建国記念の日が初めて施行される2日前、寺山と萩元は『あなたは・・・・・』と同じ手法を用いて「愛国心」をテーマに制作したのが本作。「日の丸といったらまず何を思い浮かべますか?」「家庭と祖国のどちらを愛していますか?」といった質問を矢継ぎ早に投げかけていく。放送後には“偏向番組だ”として郵政省がTBSに事情聴取を行った。入社して受けた新人研修で本作に衝撃を受けた私は、拙作『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』を監督するに至る。

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中西太 背番号6(デジタル修復版)

中西太 背番号6(デジタル修復版)1964年7月14日放送
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦 

◆若くして西鉄ライオンズの監督となった天才野球選手、中西太。1964年6月7日、福岡県平和台球場で行われた西鉄ライオンズ対東映フライヤーズ第15回戦の実況中継に、貧困から這い上がった中西の栄光と孤独に満ちた半生を絡ませていく。「プロ野球のスカウトというのは今様の人買いであり、プロ野球の球場は、買われた若者たちの人生を懸けた孤独な劇場なのである」この冒頭ナレーションだけでもう、寺山の仕事だとわかってしまう。 

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サラブレッドーわが愛―大障碍の記録―(HDリマスター版)

サラブレッドーわが愛―大障碍の記録―(HDリマスター版)1964年10月13日放送
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
音楽:山本直純


◆1964年10月11日、千葉県中山競馬場で行われた大障碍レース。フジノオーとタカライジンの対決を軸に、騎手、調教師、厩務員、そしてサラブレッドの人生を描く。リマスターされた映像を観た私は、得も言われぬ感動に打ち震えた。馬の毛並みの美しさ、山本直純が手掛ける劇伴の艶やかさ、そして熾烈なレースを繰り広げるクライマックスの、一切ピントを狂わすことなく競走馬を捉え続けるカメラワークの超絶技巧に。これらのディテールこそが、本作の真価を謡いあげている。 

 

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勝敗 第一部・第二部(デジタル修復版)

勝敗 第一部・第二部(デジタル修復版)1965年10月5日・12日放送
構成:寺山修司
ディレクター:萩元晴彦
音楽:武満徹

◆萩元がテレビの“中継性”を見出したという『第一部』。坂田栄寿名人と林海峯八段の第四期囲碁名人戦の模様を4台のカメラと同時録音で収録。最小限のナレーションと両者の表情・手つき・呟きなどから、緊張感漂う現場の時間そのものを伝える。しかし翌週放送された『第二部』は一変、物語は思いもよらない展開を見せ、THE寺山作品へと変貌していく。ヒッチコック『サイコ』のような巧みな構成に貴方も翻弄されるがいい。 


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日の丸~寺山修司40年目の挑発~

日の丸~寺山修司40年目の挑発~2023年2月24日公開
監督・編集:佐井大紀
出演:金子怜史、安藤紘平、シュミット村木眞寿美、今野勉
語り:堀井美香、喜入友浩(TBSテレビ)
イラスト制作:臼田ルリ
配給:KADOKAWA

◆『日の丸』放送から50年後の2017年、 新人研修で本作に出会った私は、メディア論的な実験精神と社会に切り込む挑発性を持った作風に強い衝撃を受けた。「現代に同じ質問をしたら・・・?」二つの時代を対比させ「日本」や「日本人」の姿を浮かび上がらせようと、私は自ら街頭に立った。様々な実験がなされていた60年代をノスタルジックに振り返るのではなく、その普遍的な新しさを後継しテレビが成熟しきった現代に一石を投じる作品を目指した。



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カリスマ~国葬・拳銃・宗教~

カリスマ~国葬・拳銃・宗教~2023年3月17日公開
監督・編集:佐井大紀
構成:寺坂直毅
出演:千石まさ子、千石恵
イラスト制作:臼田ルリ

◆当初は『エキストラ』というタイトルだった本作だが、“エキストラ”の観察とは不在の“主役”の強調を意味していた。両者のイメージが観客の脳内で共存したとき、自ずと社会構造が立ち上がる。“国葬”をテーマに山上徹也と永山則夫、統一教会とイエスの方舟を比較。一見関係ないモチーフを追うことで本当に追いたい対象を想起させるこの手法こそ、“情報伝達”というジャーナリズムの呪縛から解放された新しいドキュメンタリーの文法であり、寺山的アプローチの後継でもあると信じたい。 



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トークショー

5/25(土)17:55『あなたは・・・・・』+『日の丸』上映後
ゲスト:佐井大紀監督

入場料金

回数券

●一般3回券3,600円

当日券

●一般1,600円/シニア1,300円/会員・学生1,200円

※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。(※回数券のご購入、ご予約は窓口のみ)
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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